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北の山脈のふもとに、小さな村があった。ほんとにすごく小さくて、武器屋も防具屋もないけど、宿屋と教会はあった。
僕はぽよちゃんを抱いて教会に走った。
「お願いします! ぽよちゃんを生き返らせてください!」
神父さんが僕の抱いたぽよちゃんを見て告げる。
「では教会に百五十円の寄付をお願いします」
あっ、よし。蘇生できるんだ。
「いいよ。百五十円くらい払うよ。早く生き返らせて!」
僕は急いで財布から百五十円とりだした。
受けとった神父さんは神妙な顔でうなずく。
「神の御名において、ぽよぽよの……」
「ぽよちゃん!」
「ぽよちゃんに今一度、生を与えたまえ〜」
そうだ。生きかえってくれ!
ぽよちゃん。
しかし、何も起こらない。
祭壇に置かれた小さな柩。
どうして、この世界では死ぬと勝手に柩が出てくるんだろう?
この柩のふたがひらくのを、今か今かと待ちわびた。
でも、そのときは来なかった。
困ったような顔をして、神父さんが言った。
「申しわけありません。祈りは神に届きませんでした」
「じゃあ、もう一回やってよ! 百五十円くらい、何回でも払うからさ!」
僕は泣きながら訴えたけど、神父さんは首をふるばかりだった。
ぽよちゃんは生き返らなかった。
それが現実だ。
僕はその日、ずっと泣きとおした。
ぽよちゃん。ごめんね。
僕を助けたばっかりに。
短いつきあいだったけど、君は僕らのほんとの仲間だったよ。
蘭さんと三村くんが静かに僕の肩を叩いた。
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