キジも鳴かずば撃たれまいに……

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「誰だっ? 貴様、何者だっ?」  そう叫ぶ翔太を見ながら、  ……わかったぞ、ボストン育ちの癖に、日本語を時代劇ででも覚えたのか、妙に時代がかったこの人のしゃべり方と、宮本さんの名前のせいで、一気におかしな雰囲気になったんだな、と思う。  二人は、意外に剛力な本田に連れ出されていったが、宮本は蘇芳の方を振り返っていた。  残った慎吾が唯のそばでつぶやく。 「三郎丸。  ……宮本三郎丸か」 「え?  慎吾さん、宮本さんをご存知なんですか?」 「昔、前田藩のご家老って人が連れてきたことあるよ、孫だって。  宮本って家に娘が嫁に行ったとか。  子どもの頃しか会ったことなかったんだけど。  あんまり可愛かったんで、三郎丸って名前の女の子かと思ってた」  ……この人も大概だな、と思っている間に飛び込んできた蘇芳が、 「唯っ」 と抱きついてくるので、  大丈夫だったかっ? と言ってくれるのかと思ったが、 「会いたかったぞっ」 と言ってキスして来ようとする。
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