キジも鳴かずば撃たれまいに……

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「送り返してきましたよー」  社屋一階の会議室に居た唯たちの許に、そう言いながら、本田が戻ってきた。  蘇芳が、 「宮本も送り返してきたのか……」 と呟いていたが。  いや、あの人も結構、居ると、話が混乱するので、今は居なくていいような、と唯は思っていた。 「そうですか。  三上さんが唯さんをね。  それは申し訳ないことをしましたね」 と、会長は今は居ないので、応対してくれていた社長が言う。 「すみません。  うっかり、父が翔太の言うことを聞いて、唯さんと婚約させてしまったものだから、ややこしいことになってしまったんですよね」 と謝られるが。  でも、後から割り込んできたのは、蘇芳さんの方だ。  私が翔太さんを好きかどうかはともかくとして、と唯は、横で珈琲を飲んでいる蘇芳を見るが、蘇芳はまったく気にしている節もない。 「じじバカな父ですが。  唯さんに他に好きな方が居るとわかれば、なかったことにすると思いますよ。  父は単に、前田様の家と縁続きになることを喜んでいただけですから」 と社長は言ってくる。
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