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「どうぞ。
お乗りください、唯様」
本田に車のドアを開けられ、迷ったが、そのまま、蘇芳に蹴り入れられるように押し込まれる。
「あっ、あんまり近づかないでくださいっ」
と唯は叫んだ。
乗り込んだ唯を更に肩で蘇芳が押してきたからだ。
「お前が奥に行かないからだ」
なんとなく、逃げられるようにドアの側に、と思ってしまったのだが、よく考えたら、反対側のドアも開いた。
仕方なく腰を下ろした唯は、
「本田さん」
と運転席の彼に呼びかけた。
「そういえば、本田さん、宮本さんがうちと縁のある人だって知ってたんですか?」
さっきの対応、まるで動揺していないように見えたが、と思って訊くと、本田は軽く、
「はい」
と言う。
「いえ、私、宮本さんから、なにか聞かされていたわけでもないんですが。
宮本さん、どうも蘇芳様より、唯様の方を守ってるように見えましたので」
蘇芳が、
「どんな執事だ……」
と呟いていた。
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