キジも鳴かずば撃たれまいに……

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 車は蘇芳の自宅に着いた。  なんとなく連れてこられてしまったが、と思いながらも、蘇芳に付いていく。  ちょっと話を聞きたい気がしたからだ。 「お帰りなさいませ。  蘇芳様、唯様」  案の定、その人物は待ち構えるようにドアの前に居た。 「宮本さん……」 と言うと、宮本はその場に跪き、 「元前田藩家老、杉田の当主、弥太郎の孫、三郎丸でございます、唯様」 と言ってきた。 「私の母は駆け落ちして、私を生みまして。  私、とても、前田様の前に出られるような人間ではなかったものですから。  唯様とお会いしたことはございませんでした」 「宮本さん、頭を上げてください。  ところで、宮本さんって、三男なんですか?  三郎丸って」 と言うと、 「いえ、長男のところが太郎丸。  次男のところが次郎丸  三人目の子供になる長女のところの私が三郎丸でございます」  ……一族でひとくくりか。  ざっくりだな。
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