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そのまま黙っていると、蘇芳は所在無げな顔をしていた。
正座したまま、少し貧乏ゆすりをし、
「なにか話せ。
緊張する」
と言ってくる。
「へっ?
なんで緊張してるんですか?」
と思わず言うと、
「そりゃ、お前と二人きりで向き合っているからだろう」
と視線を合わせず、言ってきた。
「……貴方でも緊張とかするんですね」
ちょっと感心したようにそう言うと、
「俺はお前と出会った最初から、ずっと緊張しているが?」
と喧嘩を売られているのだろうか? と思ってしまうような早口で言ってきた。
「え。
じゃあ、それであんなに挙動不審だったんですか?」
と思わず言ったが、そこは違ったようだった。
しかし、枕許にちょこんと座る蘇芳が、緊張したまま一晩中、手を握ってくれていたのかと思うと、ちょっとおかしくなってくる。
意外と不器用な人なのかもしれないな、と思って、笑うと、なんだお腹が鳴りそうになった。
「そういえば、まだ、ご飯食べてなかったです」
と言うと、蘇芳は、
「そうだな。
なにか食べに行くか。
帰りにテレビを買ってやろう」
と言い出した。
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