2293人が本棚に入れています
本棚に追加
「破談にしろってどういうことですか、おじさんっ」
わあ、やっぱり、そう来るか、と桝谷の社長、桝谷源次郎は思っていた。
仕事終わりに、翔太の許を訪ねたのだ。
翔太が日本に帰ったときにはいつも泊まっている、彼の母方の祖母の家だ。
唯との婚約を破棄しろと言ったのだが、案の定、翔太に怒鳴られた。
職場では、一応、自分を立ててくれているが、一歩会社を出たら、ただの伯父と甥だ。
翔太は椅子にも座らないまま、アメリカ仕込みの派手な身振り手振りで、一気にまくし立ててくる。
「あとから湧いてきたのは、あの男の方ですよっ。
それに、唯があの男を好きなわけでもないのに。
あいつこそ、唯に付きまとっているだけですっ」
おじさん、騙されては駄目ですっ、と主張してくる。
「そうなのか?
そんな風には見えなかったが……」
二人で並んで座っていると、妙にしっくり来る二人だった。
最初のコメントを投稿しよう!