キジも鳴かずば撃たれまいに……

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「破談にしろってどういうことですか、おじさんっ」  わあ、やっぱり、そう来るか、と桝谷の社長、桝谷源次郎(ますや げんじろう)は思っていた。  仕事終わりに、翔太の許を訪ねたのだ。  翔太が日本に帰ったときにはいつも泊まっている、彼の母方の祖母の家だ。  唯との婚約を破棄しろと言ったのだが、案の定、翔太に怒鳴られた。  職場では、一応、自分を立ててくれているが、一歩会社を出たら、ただの伯父と甥だ。  翔太は椅子にも座らないまま、アメリカ仕込みの派手な身振り手振りで、一気にまくし立ててくる。 「あとから湧いてきたのは、あの男の方ですよっ。  それに、唯があの男を好きなわけでもないのに。  あいつこそ、唯に付きまとっているだけですっ」  おじさん、(だま)されては駄目ですっ、と主張してくる。 「そうなのか?  そんな風には見えなかったが……」  二人で並んで座っていると、妙にしっくり来る二人だった。
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