キジも鳴かずば撃たれまいに……

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「おや、蘇芳様。  お早いお帰りですね」  唯と食事をし、運び込んだテレビを見たあとで、家に帰ると、玄関ホールに居た宮本がそんなことを言ってきた。 「……お前家に居たのか」 「はい、おりました」 とどうやら母親に命じられ、棚の配置を変えていたらしい宮本は言う。 「もうちょっとゆっくりしてくればよかった……」 と呟くと、 「私に見張られてると思って、早く帰ってきたんですか?」  これは便利ですね、と笑って何処かに行ってしまう。  しまった。  やられた。  ついつい、宮本が電柱の陰や、襖の向こうで見張っている気がして帰ってきてしまったのだが――。 「なにか怪しい幻術か兵法にでもやられた気分だ」 と呟いて、ちょうど帰ろうと出てきた本田に、 「違うでしょう」 と言われてしまった。
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