なさぬ仲だけど

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わたしは、変わろうと思った 一緒に悪いことをしていた子たちは家にいずらいとか親にネグレクトされているとかそんな子たちばかりだった わたしは自分が経験してそんな子たちを手助けできる人になりたいと思うようになった そうだ 少年事件専門の弁護士になろう みんな本当は愛されたいんだよ そんな子たちに親身になってやる大人がいたらだいぶ違うはずなんだ 私はおばちゃんに勉強して弁護士になりたいと伝えた 高校に入ってから、ろくに勉強しないで遊んでいた日々を呪いながら机にむかう でも目標が出来たことはわたしを強くさせた それから2浪して大学の法学部に入り一生懸命に勉強して、30歳で司法試験に合格することができた 時間はかかったけどスタートラインに立った気持ちだった おばちゃんは お祝いにちゃんと写真館で写真をとりましょうよ と言ってくれた 写真館ではおばちゃんが椅子に座りわたしが斜め後ろに立つ感じだ 写真館の店主の合図で撮り始めた 途中、わたしは少し腰を落としておばちゃんの耳元で お母さん、ありがとう と言った 自然と今だろうと言う思いがして言えた おばちゃんはわたしの方を振り向いて驚いた顔をみせて両手で顔を一瞬覆った だけどすぐに前を向き直った わたしの方からだとおばちゃんの様子はよくわからなかった 後日、写真館に出来上がったものを受け取りに行くと 二人の写真はきれいに仕上がっていた それから思いがけず店主からサプライズがあった わたしとおばちゃんとのやり取り そう わたしが腰を落としておばちゃんに何かささやいて おばちゃんがびっくりして 両手で顔を覆って 前をむいて涙を溜める ひと筋、涙を流す そして笑顔を浮かべる 写真館の店主はずっとカメラを止めず撮り続けてくれていたのだ あんまりにも素敵なシーンだったので撮り続けてしまいました これは私からのささやかなプレゼントです と言ってこの一連のシーンの写真をくださった 今でもこの時を思い出すと涙が出てしまう その時おばちゃんと撮った写真が今のわたしの宝物になっている いえ、おばちゃんじゃなかった わたしのお母さん わたしのお母さんとの本当の意味の記念写真なのです
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