手紙

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諏訪さんからの手紙は、父がすべて保管してあった。私は東吾さんと文通を始めて間もなく、それらを自分の部屋に持ってきて、最初からじっくりと読み返してみた。 東吾さんの学校や家庭での生活が細やかに書き込まれた手紙は、そのまま彼の成長記録のよう。私への報告というより、諏訪さんの親としての愛情日記だと思える。 ただ、写真にだけは親目線とは別の、ありのままの彼の成長が表れていた。 私は、今は年下になった写真の中の彼らを見つめた。色黒の顔に、やんちゃそうにも見える丸い目が輝いている。小学生の頃から順番に並べていくと、それが段々と落ち着いたものになっていくのが、ありありとわかった。 大学生……つまり、私と同じくらいの年齢だった当時の写真を見て胸が高鳴った。この頃から髪を伸ばし、どこか垢抜けた印象になる。 以前、この写真を父に見せられた私はまだ小学生だった。 子供の私はわからなかったけれど、彼はとても魅力的な青年だったのだ。
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