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許嫁
兼六園に行きませんか――と、彼は言った。
私は「はい」と返事をした。
その日、スマートフォンを新機種に換えたばかりだった。彼の声が近くに聞こえるのは、そのせいかなと思った。
『昨夜からこちらは雪降りです。新雪がとてもきれいですよ』
「そうなんですか。それは楽しみです」
『明日、駅に迎えに行きます。電車の時間がわかったら教えてください』
通話を終えて、スマートフォンを見つめる。
耳に、彼の熱が残っていた。
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