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宗介はスマホから目を離すと、部屋の壁にかかった時計を見た。いつの間にか、日付が変わってしまっていた。宗介はそれを確認すると、すぐにスマホに目を戻し、大儀そうに寝返りをうった。
特に何かやりたいことがあるわけでもないが、だからといってスマホ弄りをやめる理由を探すのも億劫である。なので宗介は、自然と眠りに落ちてしまうまでは、ずっと起きていようと心を決めていたのだ。
ところが今や、ゲームや動画鑑賞、SNSのチェックまで、思いつくことは全てやり尽くしてしまった。そうして宗介は、本当に何もすることがないまま、いろいろなアプリを開いては閉じを繰り返していた。
何か暇を潰せるものはないだろうか。宗介は意味もなく指を動かしながら、眠りかけの脳を必死に働かせて考えた。そして考えに考えた後、幸いなことに、「ホラー」というキーワードが、頭の中に浮かんできた。
この夜中に無理に起きているという状況での、突発的なひらめきは、中々無視できないものである。宗介は早速「怖い話」「都市伝説」「オカルト」といった言葉を検索し始めた。そして、終わりのないネットサーフィンをはじめた。
そうは言っても、ほとんどのサイトは大して面白いわけでもなかった。しかしそれでも、暇を持て余してしまうよりはましだ。
宗介は数十分の間で、次から次へと様々なサイトを訪れた。そして、いい加減飽きてきたななどと思い始めながら、宗介はあるサイトにアクセスした。そのサイトも、一見したところ、他と同じような陳腐な内容のように思われた。しかしよく見てみるとそれは、明らかに他のサイトとは異質の雰囲気を醸し出していた。
宗介はいつの間にか、そのサイトの文章に引き込まれていった。
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------モルジャヴ------
・【データが見つかりませんでした】次第、###は閉鎖されます。
我々は今日まで、我々の生きる現代のネット社会に蔓延る『モルジャヴ』の生態の曝露とその根絶を目標に掲げ、日々研究を重ねてきた。そして『モルジャヴ』の根絶に繋がるシステムの開発を進めていた。
ところが、我々は重大なミスを犯してしまった。これによって、#####【ERROR】
【データは見つかりませんでした】
事実、『モルジャヴ』の保有する性質は我々の想定を遥かに上回っており、『モルジャヴ』の電子媒体を介した現実世界への干渉は、前サイト『MOLJAVE』の一件の他には現在未確認ではあるが、必ず【ERROR】
これにあたって、前サイト『MOLJAVE』は永久に閉鎖される。前サイトの閲覧者に関する対策は、現在#######【ERROR】
【データは見つかりませんでした】
我々が最も恐れる事態は、当サイトに『モルジャヴ』の【データは見つかりませんでした】が及ぶことである。そのため当サイトについては、サイト利用者の権限の大幅な制限とユーザーの活動の全面規制、その他の規制によって、当サイトのデータの破壊及び改変は、事実上不可能な状態にあるはずで#######【ERROR】
【データは見つかりませんでした】
現在確認されている########は、サイト閲覧者の【ERROR】【ERROR】『目』が出現したケース【データは見つかりませんでした】
【データは見つかりませんでした】
【データは見つかりませんでした】
【データは見つかりませんでした】
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そこまで読んだところで、画面が突然真っ黒になった。暗い室内を、枕元のランプだけが照らす。電源ボタンを押してみても、何も反応がない。宗介は慌てて、電源ボタンを何度も押し続けた。するとふと、見慣れた待ち受け画面がスマホに映し出された。
一体何が起こったのだろうか。宗介は今までに経験したことのない、異様な恐怖を感じていた。たかがオカルトサイトだろう。自分はあんなものを信じているのか。宗介は必死に自分に言い聞かせた。だが、全身を襲う奇妙な寒気と鳥肌は、なかなか収まらなかった。
「はは、阿呆らしい」
宗介はそう声に出して言ってみた。そして、大きく深呼吸をした。大丈夫だ。落ち着いて考えてみれば、あんなものただの創作としか思えない。宗介は気を取り直して、スマホの画面に指を触れた。
その瞬間、部屋にうめき声のような不愉快な音が響いた。そしてそれと同時に、全身に電流が走ったような衝撃を感じた。やがて視界は狭くなっていき、意識が遠のいていく。
最後に宗介の頭の中にあったのは、視界が完全に失われる寸前に見た、スマホの画面いっぱいに映った、気味の悪い目玉だった。
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