オフィス街の中心でビリヤニと叫んだ男

14/14
前へ
/14ページ
次へ
 いいじゃないか、僕は今この感動を世に伝え……ふとポケットに振動を感じて、それを取り出す。  課長からコールが入っている。  うわあ……一気にショーシャンク気分が洗い流されて、僕はそこに立っていた広場の時計に目をやる。 「ええええええ、うっそだろ、もうこんな時間ーっ?」  走り出した僕の絶叫に、春めいてきた風が軽やかに笑っている気がした。  今度は時間に余裕のある時に、カナコさんをここに連れて来よう。  きっとあのひとは、こんなところでビリヤニが食えることにまず、目を見開くのに違いない。  手のひらでは課長が諦めてコールを切った。  やっぱりビリヤニは最高だ、満足してる。あとはそうだな……社に戻るまでに、ちょうどいい言い訳を思いつくことだけを祈っています。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加