オフィス街の中心でビリヤニと叫んだ男

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 カレーもそうだと思うけれど、インド及び周辺地域の料理は味つけに特徴がある。スパイスを重ね合うことで、多層的な味を構築して、なに味と言えない混然とした絶妙な深みを作り上げている。僕は昔からカレー味というのに疑問を抱いている。カレー味って何の味なんだろう。他の言葉で言ったらそれはラーメン味とか魚味とか、そういうことになりはしないか。  今日のこのビリヤニはなに味だろう。クミン、カルダモン、ターメリック。まさかサフランは入っていないだろうな、この値段では?  ニンニクの効きすぎないちょうどいいバランスの香りと複雑な辛味が一体となって口の中でぱっと広がるのが、楽しい。  さらさらと皿の中で崩れていく米はまるで処女雪のように美しいし、上に載ったミニトマトが飾り切りされているのも、半分に切った真っ白なゆで卵と赤く色づく米粒のコントラストが鮮やかなのも宮廷料理の雰囲気をちゃんと醸している。  なぜかナナメに切られたネギが飾られているのは……日本への親しみのあらわれ、ということにしておこう!  そしてこの鶏肉。柔らかくしっかりと味の染みた肉がまたジューシーで、たまらない。これは間違いなくもも肉だと思うね。しっとりして脂がまわる。
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