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この街は担当の取引先があるから何度か来たことがあるけれど、お世辞にも飲食店に恵まれているとは言い難いエリアで、僕の好むような個人経営の店なんかは徐々に姿を消して、チェーン展開の店ばかりが幅を利かせる……食通にとっちゃ地獄のような場所だった。
この中から満足いく中華屋を見つけることができるのだろうか。
商談よりもっと切実な任務が、そこにあった。
そんな決死の覚悟を知ってか知らずか、駅前広場の向かいにふと僕の鼻と目を奪う一軒の店。
柔らかくもエキゾチックなその匂い、オレンジ色の看板、そして……橙白緑のトリコロール……。
カレー屋だ。
ぐぅと僕の腹が応える。いや待てよ僕の腹? お前が求めているのはカレーではなくチャーハンなのであって、決してこのふわふわかつパリッとしたバターとろけるナンではなくてパラパラしっとりとした米粒……
きゅううううん。腹が唸る。
白旗を上げて自動ドアから颯爽と入店した。もうこの際カレーでいいや!
僕は、カレーだって大好きだ!
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