オフィス街の中心でビリヤニと叫んだ男

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 狭い店内には机も椅子もぎゅう詰めで、入店率はまだ五割いくかどうか、という感じではあったが大きな窓から太陽光の入る清潔な店内は好印象だ。今日のカレーがしめじとチキンであることを確認して、それを……  机の上に置かれた写真に目を留める。  ビリヤニ……だと?  まさかランチタイムにビリヤニを出す店がこんなところにあろうとは思ってもみなかったので、驚いた。  ビリヤニがメニューにあるということはあのインドの国旗は飾りではなく、たぶん本当にインド系のカレー屋だ。日本で営業している「インドカレー」はインド以外にネパールやパキスタン系も多くて、少しずつ作り方や味も違うのだが、少なくとも写真のそれはどこからどう見てもインドのビリヤニそのもの、に見えた。 「あっ、すみません、ビリヤニください」 「ビリヤニ……辛さ?」 「じゃあちょっと辛めでお願いします」 「ちょとカライ……」  首が短く浅黒い店員が軽くうなずきながら厨房へ向かう。インド人っぽい。南アジア・中東系の人種に詳しいというわけでは全くないのだが、なんだか非常に頼もしい感じがしてきた。  まだ若干、ナンおかわり三枚までOKと書かれたボードに心を残しつつ、来るべきビリヤニに備えて水を一口。
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