オフィス街の中心でビリヤニと叫んだ男

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 ビリヤニという料理を初めて食べたのも学生時代だった。東京グルメ研究会というサークルに入った僕はそこで未知との遭遇を果たすことになる。  ひとりの女性と、あまたの聞いたこともない料理と巡り合ったわけだ。  その女性、名前をカナコさんというのだが、彼女とはまだ一応関係は切れてはいない。こうして社会人になっても時折一緒にグルメを研究する師弟として、っていうか最近はもうほとんど愚痴聞き係みたいなことになってしまっているんだが、まあ構わない。  僕とカナコさんは飯の趣味が奇跡的に一致している。この相性のよさに気づけば、きっと彼女もいつか僕を彼氏に昇格……させてくれるのかなあ?  どちらかというと、僕が料理の腕を磨いて餌付けした方が早いような気も最近ではしている。  などと余計なことを考えていたら、さっきの丸い目玉の店員が太い指でサラダとフォーク入れを持ってきてくれた。ランチにはサービスでサラダがついているらしい。  彼が持ってくるとおちょこみたいに見えるサラダ皿はガラス製でひんやりしていた。たぶん冷蔵庫に入ってすぐ出せるようにしてあるんだろう。
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