たたりの町

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          *  それはひと月ほど前に始まった。  この家と同じ並びの、東の角にサトウ氏の家がある。この家から三軒向こうになる。そのサトウ家で、金曜日の晩におじいさんが亡くなった。死因は、急性心不全。つまり、原因はよくわからないが、心臓が止まってしまったということだ。悲しいことではあるが、おじいさんは一年以上も寝たきりだったから、そんなこともあるだろう、と思われた。  ところが、翌週の金曜日の晩、今度はサトウ家のとなり、つまりここから二軒目のマエダという家で、四十過ぎの奥さんが亡くなった。  時刻は、午後十時。当時、奥さんは入浴中だった。ほかの家族は居間でテレビを見ていた。歌番組の大音量にまじって、お風呂場から悲鳴が聞こえたみたいだと、娘が様子を見に行った。そこで母親が死んでいるのを発見したのだった。死因は、急性心不全。  不幸が二度続いた。偶然のようにも思えた。  それでも、マエダ家のとなり、つまりお隣のスズキ家では、大事をとった。翌週の週末、金曜日から日曜日まで、一家そろって外泊したのだ。  外泊先ではなにごともなかった。日曜日になって、やれやれと帰ってきて、そのまま過ごしていた。  そうしたら、その翌週の金曜日、つまり先週の金曜日の晩に、五十になるオヤジさんが亡くなった。二階の寝室で叫び声がしたのを聞いて、家族が駆けつけてみると、もう息をしていなかった。時刻は、午後十時。死因は、急性心不全。ちなみに、家の出入り口には全部鍵がかかっていて、外からの侵入は不可能だった。  町中、大さわぎになった。  これはもう偶然じゃない。これは……たたりだ、と。
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