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突然上からかかっていた重みが減って上体を起こすといつもの匂いに包まれて思わず安心してしまう。
ぎゅうっと力を込められて苦しい。
「安藤…苦しいです、……まさやさん?」
名前を呼ぶと込められた力が緩まる。目が合えばそこにいつもの笑顔は無く、その無表情な顔に目が離せない。
「まさやさん?」
「いってぇなオイ。」
あの音から大分強く蹴った事が分かるが少し離れたところでのそりと起き上がったそいつ、
さっきまで上にいた如月の存在にはっとする間も無く安藤に抱っこされる。
しかもお姫様抱っこだ、軽々と抱く安藤にショックを隠し切れない。そんな私の様子や如月に一切構うことなくスタスタと歩いて行く安藤。
意外にももう絡んでこない如月はこちらをじっと見ていた。
そして忘れていた大事な事にはっとする。
安藤に何か言っても引き返してくれる気が全くしないし、背に腹は変えられない。
「如月!!!!!あなた先程の詫びにその生徒を保健室に運びなさい!!!」
私の言葉が聞こえたのか、目を軽く見開いてだがすぐにまた何だか腹の立つ笑みをした。
まてよ?
あの様な言い方ではまるでそれをしたら先程の非礼を許すという意味に捕らえるだろうか?
安藤の肩越しから喋っていたら不機嫌なオーラが漂っている様な気がするのはきっと気のせいです。
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