夜明けが来る前に

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夜明けが来る前に

 また週末がやってきた。いつもならもう秘密基地に向かうために準備している時刻だけど、今日はそんな気分になれない。  ベッドに横たわりながらスマホをいじる。新刊の案内や新作ゲームの情報なんかを眺めていても、ちっとも頭に入ってこない。  諦めて寝ようとも思ったけど、こんな時に限って目が冴えてしまって寝付けない。  傍に投げ捨てたスマホを拾い上げる。時間はさっきから三分ほどしか経ってない。  はぁ……。  真っ暗な部屋の中、見慣れた天井を仰ぐ。  ジッとしていると、図書室で聞いた委員長のウワサが蘇る。  委員長の妊娠。石原さんはただのウワサだと切り捨てた。幸いなのか、そのウワサはまだ僕のクラスに届いていない。それも時間の問題だろうが。  仮にそのウワサが本当だとしてそれでも僕になんの関係があるのか。僕と委員長の関係なんて、同盟を結んでいるとはいえただのクラスメイトでしかない。友人と呼べるほど気軽ではないけど、お互いを仲間だと認識している、不思議な関係。エイリアンズ。  つい委員長が僕の知らない誰かと淫らにたわむれる姿を想像してしまう。下腹部に熱を感じた。そんな自分に嫌悪する。  布団を抱え込み、熱が引くのを待つ。誰かに対してそう思ったことに、嫌悪とモヤモヤした感情を抱いた。  嫉妬だ。  僕は僕の中にそんな感情があることに驚いた。今まで委員長を性の対象として見たことなんてなかった。それがどうだ、たった一つのウワサでこんなにも簡単に覆る。汚れている。それを消そうとすればするほど、強くなる。
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