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委員長のウワサ
「あっ」
「やあ」
僕が石原さんと会ったのは行きつけの古本屋でのことだった。
家に帰ってきてから起きた頃には昼を少し過ぎようとしていた。家には誰もおらず、リビングには『お父さんと出かけてきます。母より』と年の割に未だ仲が良い両親のメモ書きが置いてあった。バイクが見当たらないところを見ると、兄貴は知らない間に出かけたみたいだ。
ふと、一人静かになった家の中で寂しさを感じた。飼い猫の名前を呼んでみても反応はない。本当に一人だった。
お腹空いたな……。
一人だろうが大人数だろうがお腹は空く。僕は大きく伸びをすると出かけることにした。
ここしばらく夜中に出歩いているせいで休日は家で寝ていることが多く、昼間に外に出ることが久しぶりだった。知らない間に緑でいっぱいだったはずの街路樹は赤や黄色へと葉の色を変えていて、秋の訪れを感じた。
僕の家から自転車で十五分ほど走った頃、目的の場所についた。
パッと見ただけじゃその建物がなんなのかわからない。外はレンガ造りで、見るからに古そうな外観をしている。中は木の床張りで、年季のせいか元の色がどんな色をしていたのかわからないくらい黒く、歩くたびに軋む音がした。
夢見鳥、それがこの古本屋の名前だ。
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