委員長のウワサ

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 整然と並べられた本棚の中は、棚とは対照的に乱雑に本が並べられていて、本の厚みや高さがちぐはぐだった。店主いわく、同じ本をキレイに並べるより、こうした方がどんな本があるかじっくり見てもらいやすいということだった。決して整理するのが面倒だからとかではないらしい。  そんな店主の考え通りに動いているわけじゃないけど、大小バラバラな本が並べられてるせいでじっくり見ないとなにがあるかわからない。人によってはこれを不快に感じると思う。けど僕にとって一つ一つの本の出会いが宝探しをしている気分だった。  何列目かの本棚を巡っていると、不意に声をかけられた。 「石原さん」 「やあ。こんなところで君に会うなんて、なんて素晴らしい偶然だろうか。まるで予想だにしない作品に出会えた時と同じくらいだ」  石原さんが大仰な身振りで話しかけてくる。ほかの誰かがやれば滑稽に見える仕草も、石原さんがやると妙に様になる。石原さんの服装もそうだけど、一見すると線の細い美少年に見える彼女の切れ長の瞳や顔立ちが余計にそう見せるのだろう。 「何かいい出会いはあった?」  石原さんの言葉を借りて言うと「それなりに」とはにかんでいた。手に本を五冊持っているのがその証拠だろう。
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