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いつもの週末、僕はいつものように秘密基地へと向かった。
日付が変わった時刻、いつものドライブイン、けれどそこに委員長の姿はなかった。
もしかしたら遅れてるのかもしれない。けれど、委員長は来ない。
二時、三時、と時間が過ぎていく。
視線がスマートフォンと入口を行ったり来たりしていた。何回かそれを繰り返したあとで新聞配達のバイクの音が聞こえた。まだ外は暗いのに、時刻は朝を迎えていた。
諦めて外に出る。肌寒い。薄手の服じゃ朝は寒い季節になっていた。
外に停めてあった自転車にまたがって、もう一度ドライブインを見る。そして僕は少し強めにペダルを漕ぎだした。
もやもやとした思いを抱えながら登校すると、空白だった机に委員長がいた。話しかけたい気分だったけど、周りをクラスの女子が取り囲んでいて、とても話しかけられるような雰囲気じゃなかった。
「お、今日は委員長来てんじゃん。おーい委員長大丈夫か?」
智也が入ってくるなり委員長の存在に気づいた。気安く話しかけられるところはさすが智也だ。
「心配かけてごめんね。親戚の方で不幸があったからしばらく休んでいたの」
「風邪とかじゃなくて良かったな。コウなんてずっと委員長が休みだったから心配して授業も聞いてなかったみたいだぜ」
「な? コウ」と余計な事を付け加えてくれた。委員長のことを心配してたのは間違ってない。けど、それを当の本人に告げるのはもう少しデリカシーがあってもいいと思う。
委員長と目が合った。「心配かけてごめんね岡本くん」委員長が微笑んでくれた。
「う、うん。何事もなくて良かったよ」
ややしどろもどろになりながら言う。その言葉も矢継ぎ早に繰り広げられる女子たちの会話の中に埋もれていった。
なんだ、なんてことなかったんだ。
僕はこっそりと安心していた。
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