夜明けが来る前に

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 でも、もしその相手が僕だったら……?  そう思うと、僕の意思とは関係なく果てていた。下腹部の熱が急激に落ちていく。真逆に顔に熱を帯びた。 「……最低だ」  しばらくじっとしていたが、ゆっくり起き上がると汚れた下着を脱ぎ捨て、風呂場へ向かった。  家族は全員寝ていた。こんな姿見られなくてよかったと思った。  シャワーを浴びる。冬が近づいてきたせいか、お湯が出てくるまで少し時間がかかった。  体を洗う。いつもより力を込めた。クラスメイトを想像して欲情を満たし、汚れている自分に腹が立った。  脱衣所にはこの家の小さな一員が、バスマットの上で丸くなっていた。僕のことを心配して見に来てくれたのか、なんて好意的な解釈も出来るけど、きっと寒いから少しでも暖の取れるところを探した結果なのだろう。身じろぎ一つ立てず、代わりに寝息を立てていた。  彼を起こさないようにそっと自室に戻る。兄貴の部屋の前を通ると、かすかにテレビの音声が聞こえた。またテレビをつけたまま眠ってしまったらしい。  濡れた髪もそのままに、ベッドに潜り込む。ほんのり残っていた温もりが気持ちいい。  これなら眠れそうだ。そっとまぶたを閉じる。
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