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と、けたたましくスマホの着信音が鳴った。意識を手放そうとしていたから余計にそう聞こえた。
びっくりしながら手に取ると、見たことのない番号が表示されていた。
時間も時間だ。見たことない番号からかかってきたことに、恐怖感を抱いていると、つながらないことにしびれを切らしたのか、鳴り止んだ。しかし、その数秒後また同じ番号からかかってきた。
こんな時間にこんなことをするのはよっぽどの暇人かもしくはよっぽどの何かがあるか、だ。
迷った挙句、通話ボタンを押した。
「もしもし……?」
「あ、やっとつながった。もしもし、コウくん?」
聞き覚えのある声。そして今一番聞きたくない声。この世で僕のことをコウくんと呼ぶのは一人しかいない。
「……委員長?」
「そうそう、相川です。電話に出てくれないから間違えてるのかと思っちゃった」
「間違ってないけど、どうして僕の番号知ってるの? 教えたことなかったよね」
「あー、それは友達に教えてもらった。それよりも! コウくん今日は来ないつもり? わたしずっと待ってたんだけど」
「もしかして今秘密基地?」
「そうだよー。一人でずっとコウくん待ってたんだから。だけど時間になっても来ないからこうやって電話したの」
「待ってて! すぐ行くから」
電話を切ると慌てて支度を始めた。さっきまで気配を消すように物音を立てないよう行動していたのが嘘のようだ。適当に見繕ったパーカーとジーンズを着ると、部屋を飛び出した。物音に寝息を立てていた猫が驚いて走り回っていた。
家の鍵をかけたことを確認すると脇目もふらずドライブインへと夜の街を走り出した。
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