夜明けが来る前に

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「……それでどこまで知ってるの?」 「委員長には大学生の彼氏がいるって」 「他には?」  僕は答えない。 「大丈夫。コウくんの知ってることを言って」 「……委員長が妊娠してるって。でもウワサだって聞いた」 「コウくんはどっちだと思う?」 「僕は……信じないよ」  嘘だ。心のどこかでそれが本当だと思ってる。だから僕は委員長に嫉妬と欲情を抱いた。そんな心情に気づいているのか「ありがとう」と一言だけ呟いた。 「ねぇ、セックスってしたことある?」 「はぇ?」  僕は突然の質問に声にならない声を上げる。 「セ、セックスって……?」  たじろぎながら聞き返すと、「そう、セックス」言い澱むことなく返してきた。  僕が言葉に詰まってると「その様子だとまだみたいね」委員長がテーブルに伏せって小狡く笑った。けれど嫌味は一切ない。 「そ、そういう委員長は?」  僕の言葉に「女の子にそんなことを聞くんだ」僕は慌てて取り繕う。 「冗談だよ。わたしから聞いたことだもの、気になるよね。それで?」 「それで?」 「わたしが処女かそうじゃないかってこと」 「えっ……」 「今いやらしいこと想像したでしょ」  委員長がにこっと笑う。僕はたじろぐばかりだ。 「答えは……ノー。ついでに言うと妊娠しているってのも本当」  委員長からもたらされた答えに、僕のなにかが足元から崩れ去る音を聞いたような気がした。 「それって」 「うん。その彼氏──だった人が相手」 「だった人?」 「そ、だった人」  委員長はテーブルから体を起こすと、ふーと大きく息を吐いた。 「ちょっとだけ話してもいいかな」  そう切り出すと委員長はポツリポツリと、話しだした。
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