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「わたしさ、転校するんだ。お母さんの実家に行くの。誰もわたしのことを知らない土地でお腹の子と一緒に暮らすつもり」
「もしかしてこの間休んでいたのも」
「うん。退学手続きと向こうで暮らす準備のため」
「いつから?」
「来週にはもういなくなる予定」
「……そっか」
驚きはもうなかった。これ以上驚くこともさすがにないだろう。
バラララと新聞配達のバイクの音が響く。夜明けが近い。きっとこの夜が僕たち二人の最後の夜だ。この夜が終わればエイリアンズ同盟は解散する。
「最後にさ、ハンバーガーでお祝いしない?」
「お別れにハンバーガーなんて、どうせならケーキとかにしたら?」
「我々エイリアンズ同盟はハンバーガーでお祝いするのが礼儀なのだよ」
「そう? うん、そうだね。じゃあ今日はチーズバーガーにしようかな」
「だったらわたしも」
「五十円高いよ?」
「今日くらいはね」
そうして出てきたチーズバーガーは最後だというのにやっぱりしょんぼりしていた。
秘密基地を後にする前にお世話になったお礼にと少しだけ片付けをした。これでここに来ることももうないだろう。
委員長がそっと秘密基地の扉を開く。
「これで……もう終わりなんだね」
名残惜しそうに振り返る。僕は振り返らなかった。
「ほら、行こっ。夜明けが来る前に」
二人で秘密基地を飛び出した。
遠い空の彼方から朝日が差し込む。その中で微笑む彼女はたしかに美しかった。
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