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この星の僻地の僕らに
委員長が学校を去ってから三ヶ月が経った。年が明けてから慌ただしく三学期が始まると、あっという間に春が近づいていた。委員長は家庭の事情により転校したということになっていたが、人の口に戸は立てられないという言葉の通り、委員長に関するウワサは瞬く間に広がった。委員長の突然の転校にある人は驚き、ある人はその理由を勝手に考察し盛り上がっていた。普段は真面目で周囲から女王様と呼ばれているような人間のスキャンダルであればたちまちのうちに沸き上がるのも不思議なことじゃない。僕はそんな周りの雰囲気が嫌だった。
けれどそれも卒業を前に進路について考えさせられるようになると、みんな委員長のことなどすっかり忘れてしまったかのように話題上がることすらなくなった。
学校に通うのもあと数日となったある日僕はあの秘密基地へと来ていた。同盟が解散して以来一度も訪れていなかったが、なんとなく来てみたくなった。時刻はもちろんいつもの通り日付けをまたいだ深夜。冬の空気の中に春の匂いが混じっていた。
たった三ヶ月離れていただけなのにとても懐かしく感じる。古びたアルミ枠のガラス戸を開ける。もちろんそこに出迎えてくれる人はいない。
代わりにそこにいるはずのない人物がいた。
「なんで……?」
僕がそう口から漏らすと、彼女はやや不満そうにしながら呼んでいた文庫本を閉じた。
「遅かったじゃないか。ずいぶん待ちくたびれたよ」
「石原さん……どうして」
そこにいたのは石原さんだった。僕はなぜ彼女がここにいるのか、そのことで頭がいっぱいだった。
「なぁにたまたま散歩していたら偶然見つけてね。面白そうな場所だと思って覗いてみたのさ」
くふふ、と口元に手を当てて笑う。瞬時に僕はそれが彼女の冗談だと見抜いた。なぜなら彼女は僕がここに来ることを知っていたからだ。不審な視線をぶつけると、石原さんは「まぁ座りなよ」と促した。
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