2人が本棚に入れています
本棚に追加
「聞いたぞ。最近勉強もさぼってネットに何やら投稿して遊んでいると。」
親にばれた。
「それはごめんなさい。でも、勉強はさぼってないし、遊びでやってなんてない。しっかりプロを目指してやってる。」
この間あいつと話して出した結論。やっぱりプロになりたい。歌手に。その報告をしようと思った矢先にばれてしまった。先に伝えたかったのに。
「遊びでないとしても、芸能界なんて不安定な職種はだめだ。これからも経済状況がいつ回復するかわからない世の中で、一人息子に博打を打たせたくなんかない。そのために立派な高校行けるよう勉強できるような環境も整えてあげただろう。」
このいかにも俺のことを考えてあげたが故の最善みたいな物言いが昔から嫌いだった。俺の意見なんて結局聞いてくれたことなんて何一つないんだから。俺がこれまで欲しかったものを一度でも手渡してもらえたことがあっただろうか。ほぼない。音楽もベースも従妹の影響。従妹がギターをやるといったからベースはお古だ。くれたのは頭がよくなるというレゴやパズル。くそつまらないものばかり。
「これからの経済不安なんて誰にも分らない。未来の事を考えて不安になるなら俺は楽しい事を考えて死にたい。歌聞きながら英語の勉強もできたし、歌手目指している友達っつう学校以外の友達もできた。ネットで投稿してるとお金も発生するからバイトにもなる。勉強も両立させるからこれだけは頼む。」
ほぼ土下座みたいな姿勢で親に頼み込んだ。両親は顔を見合わせて
「わかった。ただし学校を卒業するまでにプロから声がかからなければ諦めるんだぞ。」
それは親にとってほぼできないと舐められているも同然の発言だった。
「わかった。」
とりあえずこの場で親を納得させるにはこういうしか方法はなかった。
最初のコメントを投稿しよう!