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 秀嶺学院高校のカリキュラムコースは大きく分類すると4つ。  試験を受けて入学する一般科と商業科。一般科はそのグレードで特進コースと進学コースに別れていて授業の内容も異なる。商業科は情報技術などを授業に取り入れた学科。  そしてもうひとつが特待コース。クラブ活動に専念するために設けられた学科であり、授業内容は他の3学科よりもレベルは低い。  陸上競技部は他の団体競技と比べると知名度が低く、部員も1学年数名程度ではあるが。それでも特待で入学した全国大会を狙える者ばかり。  今年入学、入部した者を含め、望以外の部員全員が特待コースで入学して来た者達なのである。  そんな環境の中で望は特待入学者に引けを取らない活躍を見せている。中学時代から全国トップレベルの選手達を相手に、入部してまだ1ヶ月ほどでだ。  それどころか明るい性格で機転も利き、すでに今年入部した1年生を引っ張るリーダー格にさえ映るほど。  一般入試で入学し、進みの速い授業への愚痴を言いたくなる梢の気持ちもわかると言うもの。 「すごいよね、望くんは。特進コースの授業を受けながら部活もやって。それでいてあんなに速いし。天は二物を与えすぎよ」 「…… 二物じゃ、ないんだけどね」 「ん?」 「いいや」  第二体育館にあるランドリーコーナーに着いたため、望は持っていた買い物籠を梢に渡す。 「じゃ、あとよろしくね~」  何かを誤魔化すようにそう言うと、望は梢に手を振り今来た道を戻り始める。 *  その日の部活が終わり、陽が暮れ始めた街並みを抜けて駅へと向かう望。  県の中心都市にあるターミナル駅を出発し、望の家がある郊外へ向かう電車はほぼ1時間に1本。乗り遅れたら1時間待たなければならない。  朝夕は高校生達で賑わうため、同じような境遇の学生が駅ナカのカフェやホームのベンチでお喋りをしている姿を、日常的に目にする。  望が駅のホームに着いたのは、電車が発車する15分ほど前。ちょうどもうすぐ折り返しの電車がやって来る頃だ。
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