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「うん、そうね。優しくて強い梢ちゃんにはピッタリかも」
「美緒さんは?お天気の勉強を続けるんですか?」
「そうね。私にはそれくらいしか取り柄がないから」
みんなそうして、未来への希望に向かって進んでいる。少し遅いけど、それに気付くことができた美緒。
きっとあまり仲良くなれなかった、同じ高校のクラスメイト達も。みんなそれぞれ夢や希望に胸を膨らませているのだろう。
もっと早くそのことに気付くことができていたなら。もっと楽しい高校生活を送れたかもしれないな。
よし!大学に入ることができたら。たくさんの人達とお友達になって、そしてたくさん恋をしよう。私にだって、その権利があるのだから。
カフェを後にした美緒と梢が、駅の改札に向かって駅ビルの中を歩く。
少し先の花屋の軒先から、そこに活けてある大きな黄色い花が美緒の目に映った。
ひまわり……
衛の身体がその活動を辞めるとほぼ同時に目を覚ました望が、まず目にした花。
夏の陽射しの中で太陽を追うように、胸を張って咲き誇るような明るく鮮やかな大きな花。
お母様は、あの花は私が持って行ったものって、望くんに伝えてくれたかしら。
衛の身体の消滅によって、生き残ったのは望なのか、衛なのか。それともその両方なのか。
怖くて今の美緒に確かめることはできないが。いつかそれを問い質す時が来たら、真っ先に訊ねてみたい。
「ねえ、望くん、衛くんは、ひまわり好き?」
花屋の前で立ち止まる美緒を、梢が不思議そうな顔をして見る。
「ねえ、梢ちゃん。お花を買ってきてもいい?」
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