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店の中へ消えて行った美緒を軒先で待つ梢。やがて美緒が、長い茎をそのままにしたひまわりの花を二つ持って戻って来る。
「はい、これ。梢ちゃんに」
「私に?」
そのうちのひとつを向けられて、自分の鼻の頭を指差して不思議そうに首を傾げる梢に美緒は続ける。
「うん。こんな私と仲良くなってくれたお礼と、これからの私達の友情の証」
笑顔の美緒に差し出されたひまわりを、梢も笑顔で受け取る。
「ひまわり……」
「そう、ひまわり。私の大好きな花。それと同時にGMS(※)── この国のはるか上空で静止して、ずっと雲の様子を見続けてくれている人工衛星の愛称」
(※:ジオステーショナリー・メテオロロジカル・サテライトの略。当時『ひまわり』は静止気象衛星と呼ばれ、雲の画像を地上へ送信することのみを主な役割としていた。
やがて『ひまわり』は運輸多目的衛星(マルチファンクショナル・トランスポート・サテライト)MTSATを経て、現在の静止地球環境観測衛星『Himawari』へと発展する)
「ああ、それなら知ってる。天気予報の時に雲の様子を映している、あの『ひまわり』よね」
「そう。これからの私を象徴するような花。ひまわりは夏に咲く花だから、夏が似合う陸上競技にもピッタリだと思って。だから梢ちゃんに」
「そっか…… ありがと、美緒さん」
これからホームに向かって、乗る電車に望くんが現れたら。この花を望くんにあげよう。
梢ちゃんと同じように、こんな私と仲良くなってくれたお礼に。そして、大切なことを気付かせてくれた君達へ。
ひまわりの似合う君達へ──
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