後日譚

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後日譚

 あれから私は猛勉強の末、第一志望だった公立大学の地球科学科に入学することを許された。  今は東京郊外の街で一人暮らしをして、電車で大学に通っている。  高校への通学と受験勉強を続ける中。朝の電車で望くんとのお喋りも、たまに駅ビルのカフェで梢ちゃんと会うことも続けていた。  それまでの私に比べたら、かなり社交的になったと思う。高校でも少しだけど、話ができる友達もできたし。  望くんとは晴れて…… そのぉ…… 恋人同士と言ってもいいような仲にはなれたけど。私の進学によって、しばらくお別れ。  結局最後まで、今でも衛くんが生き続けているのか確かめることはできなかった。  でもそれは、今となってはどうでもいいこと。  3年生が引退した後の、秋の新人大会で2年生を差し置いて優勝したこと。  2学期の中間も期末も、3学期の期末も。5教科全てでトップの成績だったこと。  それが全てを物語っているような気がした。  そして住み始めたこの新天地で。思いもよらない再会が私を待っていた。アルバイトを始めたハンバーガーショップに、幸崎先輩が働いていたの。  こんなことってある?再会できるって知っていたら、あんなに塞ぎ込むこともなかったのに。  でもこれが、未来なのよね。きっと未来の大切さに気付いた私に、神様かアンジェラさんがくれたご褒美なのだと思った。  そして今は私、新しい恋をしている。幸崎先輩の大学の同級生で高校から同じクラスだったという人。  ちょっと不良っぽい外見なんだけど、内面から優しさが滲み出て来るようなその人が気になって仕方がない。  ゴメンね、幸崎先輩。そして望くん、衛くん。  私にだってこれから、もっと素敵なことがあったっていいじゃない! 【完】
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