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「そこらで売ってる5、6万のコートやスーツならこんなことはしないんですが…」
運転手が口を閉じるのが見えた。
僕はコートの裏地を見せて、イタリアの国旗とブランド名のタグを見せた。
「イタリアから取り寄せたデザイナーズで、チェーンのクリーニングには出せないんです…」
「sed' isigas?知らないな、で?」
口数も少なくなっているのが分かる。
「メーカーに送って洗って貰うので、2万は掛かります。それと、スーツもロンドンに行った時に買ったオーダーメイドなので…」
「あの…脅してるの?俺のこと」
「えっ?いえいえ、事実を述べているだけです。お支払いいただくことは考えていません」
「じゃあ写真はなんなの」
「ネットと言っても仲間内のサークルみたいなもので…あ、あなたの会社、サンジェスの元常務もおられます。あなたも役職者ですよね」
「えっ、なんで俺の会社知ってるの?」
「そこに社章が…」
運転手の襟を掌で示す。
「わたしの会社もサンジェスさんと同じくらいの資本があるので、たまたま会合でお近づきになれたもので…」
運転手が言葉を探して黙った。
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