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あっけない
「今年は良いことありますように!!」
パンパン
コンビニバイト終わりの帰り道、家からすぐ近くにある古びた神社で、僕は必死に願掛けをしていた。
僕の名前は宮本一心(みやもといっしん)、25才フリーター。
去年は色々と散々な目に会い、それを払拭しに1月1日の今日、神社にやってきた次第だ。
「それにしても、人がいないな」
時間は午前7時。古びた神社とはいえ、初詣に訪れる人が一人も見当たらない。
「やっぱり、少し離れてでも人気のある所に行けば良かったかな?」
願掛けし終わってしまった僕だが、新年早々後悔する。
「でも、神社は神社だ。きっと神様がなんとかしてくださるに違いない」
そう言い聞かせ、神社を後にしようとした時だった。
ズボンのポケットに入れていたスマホが震える。
ポケットから出し画面を見ると、彼女の彩芽から電話だった。
去年、散々ついていない一年を過ごした僕だが、彩芽のお陰でなんとか一年を乗りきれたといっても過言ではない。
「新年明けましておめでとう。今年も一年よろしくね」
彩芽は二つ年上の彼女で、アパレル関係の仕事をしている。
新年も、福袋だのなんだのと忙しいらしく、正月は一緒に過ごせないかもと言われていた。
「、、、。」
「どした彩芽?」
「あのさ、私達別れない?」
急な展開に愕然とする僕に、更なる追い討ちが。
「ガサガサガサ」
電話の奥で何やらうごめく音。
「ちょっと、今は止めてって」
うごめく音と共に、彩芽が誰かと話す声がかすかに聞こえる。
もしや、これって、、、
「あの、彩芽?」
「あー、君が一心くん?」
見知らぬ男の声が聞こえてきた。
「はい?え?てか誰?」
「あー、俺?彩芽の彼氏。
まぁー正確に言うと、今から彼氏かな。
で、君は元彼になった訳よ。
それじゃ、そう言うことだから」
男はそう言うと電話を切った。
「、、、。」
意味は分からず、怒りなのか悲しみなのか分からないが、スマホを持つ手が震える。
だが、このまま「はい分かりました」とはならず、彩芽の番号をリダイアルする。
しかし、残酷にも番号は着信拒否をされ、繋がらず終わった。
「なんなんだよ。彩芽仕事じゃなかったのかよ。
いや、今はそんなことどうでもいい。
そう、あの男はなんなんだよ。
なんで、なんで」
彩芽との楽しかった日々を思い出しながら、僕は泣いた。
もう、二度と戻れない彩芽との日常。
今の僕には耐えられなかった。
「今年も一緒に旅行に行こうって、海とか山とか行ったり、美味しいもの食べたりとか、二人でまた沢山色んな思いで作ろうって、この前話したばっかじゃんか。なのに、なんで」
女々しいと言われて構わない。
それだけ、僕にとって彩芽は大切な存在だった。
「ちくしょー!!」
僕は背にしていた神社を振り返り見ると、願掛けなどではない、もはや脅迫めいた言葉を発した。
「どうせ、神様なんていないんだろ?
だっておかしいだろ、新年早々願掛け直後に知らない男から君はもう元彼だからって言われる。
ふざけんなよ!神様が本当にいるなら、こんなひどい仕打ちが何故出来るんだよ?
なぁ、本当にいるなら何か言えよ!
僕の前でこの状況説明しろよ。
本当に。本当にいるのなら、、、。
出てこいよ、神様ー!!」
「あ?呼んだか?」
、、、。
「えーーーー!!!」
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