第二章 違法薬品密輸業者

4/10
前へ
/155ページ
次へ
「残るは貴様だけだ」  キリヤは窓辺に立っている男を見ながら言った。  周囲には無残な姿の骸が四つ転がっている。  鮮血のついた黒刀を見せつけた。 「ここを壊すつもりか?」 「そうだな、無差別に殺してやるよ」  キリヤは冷ややかな声で言い放った。 「皆殺しか」  キリヤはうなずく。 「ここの実態は分かっているのか?」 「ああ。ここは違法薬品を、闇ルートを使って日本に流している」  男は溜息を吐く。 「そこまでの情報をどうやってつかんだ?」 「その質問には答えられない」  男は鼻を鳴らした。 「ふん、まあいい。ただ、黙って殺されるわけにはいかない」 「だろうな」  キリヤは呟いて、黒刀を構えた。  男はキリヤに向き直り、拳銃と剣を構えた。  手始めにと言わんばかりに、数回、発砲してきた。  キリヤはそれをすべて喰らいながら、男との距離を詰める。  それに驚いた男は、思わず剣を振り下ろす。  キリヤはそれを黒刀で受け止める。  鍔迫り合いの末、キリヤが勝ち、胸に一撃を与える。 「ぐあっ!」  男は焼けるような痛みに顔をしかめ、思わず声を上げた。  鮮血が溢れ出す。  対するキリヤもいくつかの弾丸を受けている。弾丸が撃ち込まれたところから、鮮血が垂れている。  それでもキリヤは表情を崩さなかった。 「痛みを感じていないのか」  苦し紛れの問いに、キリヤが答える。 「いいや、感じているとも」 「なら、なぜ、そんな顔をしていられる!」  キリヤは溜息を吐く。 「その理由を教えるわけにはいかない。もう、話はこれくらいでいいだろう」  キリヤはそう言って、黒刀を突き出した。  慌てて躱した男だったが、キリヤに背後を取られてしまい、動きを止める。 「ちっ!」  男は忌々しげに舌打ちをした。  キリヤは黒刀で、背中を斬りつける。  鮮血が迸った。 「があっ!」  男は叫び、身体を丸めた。  ポタポタと鮮血が零れ落ちるのを見ながら、キリヤは男の正面に回る。  男の目を見ると、まだ戦意が消えていなかった。  ――その戦意も、きちっと消してやらねばな。  キリヤは内心で呟くと、鮮血の滴る黒刀を構えた。  男は弾切れにでもなったのか、拳銃を捨てると、剣を構えて突っ込んできた。  キリヤは躱さずにそれを受けた。  男とは違い、キリヤは冷ややかな笑みを浮かべた。 「お前……いったい、なんなんだ」 「……」  キリヤは答えない。  無言で、腹に刺さった剣をゆっくりと抜きにかかる。  男の横顔が驚愕に染まる。  キリヤは動じることなく、剣を抜き切ると、鮮血が腹から溢れ出した。
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加