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事務所を出てキリヤは声を張った。
辺りはパニック状態だった。人でごった返している。
「どうなっている?」
「上の階から順に殺しています!」
美乃華の声が聞こえてきた。
唯一の出入り口は、すでに塞がれていた。美乃華が合図をする前にやったのだろう。その間も男達の悲鳴やら、発砲音やらが響いていた。
「た、助けてくれっ! 誰かが、人を殺しているんだ!」
キリヤに気づいた男が駆け寄ってきて、言った。
「助けを求める相手を間違えたな」
キリヤは溜息混じりに言った。
「えっ?」
キリヤはきょとんとする男を一瞥して、頭に黒刀を刺し込んだ。ひとつ、骸ができる。
それを見た人間達は、キリヤとの距離を取ろうと躍起になるも、大勢の人の波には勝てない。
キリヤは黒刀を閃かせながら、次々に人を斬り始めた。ジンの作業に関わっていると思われる人物を全員。
それから三十分ほどかけて、無抵抗の人間達を全員殺した。辺りには無残な骸達と、耳には彼らの叫びや断末魔が残っている。
キリヤは頭を振ってそれを振り払うと、返り血で真っ赤になった美乃華を一瞥する。
「大勢殺したな」
「ええ、大丈夫ですか?」
美乃華が心配そうに聞いてきた。
「大したことはない」
キリヤはふっと笑って答えると、踵を返した。
美乃華は黙ってその後に続いた。
【オーダー完了 生存者なし】
キリヤは車に乗り込むや、スマートフォンで短いメールを送った。
スマートフォンをポケットに仕舞うと、車をスタートさせた。
しばらくすると逸崎のいるラボの前に着く。
二人は装備を持って、車を降りた。
キリヤが片手で黒刀を持ったはいいものの、左手が怪我をしているため、どうしようかと考えあぐねていると、美乃華が手を出してくる。
「持ちます」
「重いぞ」
「両手で持ちます」
ふふっと美乃華が笑うと、キリヤは黒刀を差し出した。
両手でしっかりと持ってみせた美乃華を見て、キリヤはラボに向かって歩き出した。
美乃華はその後に続いた。
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