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「逸崎、きたぞ」
「おわっ! ……なんだ、お前達か」
PCの前に陣取っていた逸崎は振り返ると、キリヤの声でびっくりしたように言った。
「お前のところにくる人間なんて、そんなにいないだろ」
キリヤは溜息を吐いた。
「まあ、そうだけどな」
逸崎は苦笑しながら、PCを一瞥して、二人に向き直った。
「ん? 珍しいな。美乃華ちゃんが、お前の黒刀を持っているなんて」
「左手、怪我しちゃったんですよ」
美乃華は困ったように笑いながら言い、黒刀を傍らに置くと、ソファに座った。
「そうか、お前はさっさと奥へいけ」
キリヤに対してそう告げた逸崎は、カーテンに手をかける。
キリヤは黒刀を置きにいき、そそくさと、診察用のベッドに向かう。
逸崎がカーテンを引いた。
キリヤは革手袋から外し、右手でローブを脱ぎにかかる。それが終わるとワイシャツを脱ぎ始めた。なんとかそれを終えると、すべてカゴに放り込んだ。
キリヤがベッドに横になると、傷の具合を見た逸崎が呟く。
「こりゃ酷いな」
腹の左側をなにか鋭いもので刺され、複数の弾丸が埋まっている。左手は刃をつかんだのか、掌に横一線の深い切り傷が刻まれている。
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