28人が本棚に入れています
本棚に追加
「……ありがとうな」
キリヤは呟くように言うと、美乃華を優しく抱きしめた。
翌日、キリヤはリビングにいた。
ソファの背もたれを倒し、目を閉じていた。
起きて自室から出てきた美乃華はそんなキリヤを見つけて、トコトコと、近づいてソファに座る。
身体を休めているのだろう。
美乃華はその邪魔をすまいと、そうっと頬を撫でる。早くよくなりますようにと、願いを込めて。
手を離して立ち上がろうとした美乃華だったが、キリヤに手をつかまれてしまう。
「休んでいればいいのに、どうしたんです?」
立ち上がるのを止めて、キリヤの隣に座り直すと、美乃華は声をかけた。
「傍にいてほしかった」
キリヤは目を開けてそう言うと、美乃華を抱きしめた。
「っ……!」
突然のことに顔を赤らめながらも、キリヤの背に手を回した。
「私の心は、あなたとともにあります。寂しいだなんて、思わなくても、いいんですよ?」
美乃華が幸せそうに笑いながら言った。
「でもな、腕の中にいてくれないと、無性に寂しいときがあるんだよ」
キリヤは言いながら、美乃華をぎゅうっと抱きしめる。
――寂しがり屋さんですね。
抱きしめ返しながら、美乃華が内心で思う。
――そういう、ちょっとだけ子どもっぽいところも、好きですよ。
美乃華はふふっと笑いながら、キリヤの胸に頬擦りをする。
「苦しくないか? 寒くはないか?」
キリヤの気遣いがとても嬉しく思う美乃華は、愛おしそうに抱きしめた。
「大丈夫ですよ」
キリヤは安堵したように息を吐き、優しく美乃華を包み込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!