第三章 美術館

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 キリヤは車に乗り込むや、美乃華にスマートフォンを渡す。  美乃華はそれを受け取り、視線を落とした。 【ターゲット 美術館 ノニン 違法ルートを用いて入手した贋作を、本物として展示している。報酬は十億円】 「やっていることがもう、ダメですね」  オーダーの確認をした美乃華が、ぼそっと言った。 「そうだな」  キリヤは苦笑する。 「どうしてそう、手を抜こうとするんですかね?」 「さあな」 「これって、展示しているもの全部が、贋作ってことですよね?」 「ああ」  キリヤがうなずいた。 「呆れてものが言えません。だったら、本物を飾れるようにすればいいんですよ。そうしたら、狙われなかったかもしれないのに」  美乃華は頬を膨らませる。  そんな美乃華を見ながら思う。  ――彼女も殺しを楽しんでいるのではない。  あらためてそう感じたキリヤだった。 「そろそろ着くぞ」  キリヤは美乃華に言った。 「大きな美術館ですね~」  美乃華が車から降りて言った。  彼女の言う通り、目の前には巨大な美術館の建物があった。 「いくか」  キリヤは黒刀を両腰に帯びて、そう言うと、歩き出した。  その後に美乃華も続いた。
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