第三章 美術館

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 キリヤはその返事が合図だというかのように、客の中へ突っ込んだ。 「ぎゃあ!」 「きゃあ!」  複数の悲鳴が上がった。  キリヤは急所を狙って、黒刀を薙いだ。  密集していたので、五、六人が餌食になる。  バタバタと倒れていく。  キリヤは動きを止めなかった。  次々に斬撃を繰り出す。  四回ほど繰り返すと、地面に倒れて息をする客達の無残な姿があった。 「いたぞっ!」  それまでキリヤの姿を探していた自称警備員らはようやく、その姿を捉え、次々に発砲する。  キリヤは弾丸を真っ二つに斬りながら、弾丸が止むのを待つ。  しばらくして、弾丸の雨が止む。  キリヤはその間に、一人ずつ黒刀を突き刺して、息の根を止めていった。  残るは最後の一人というときに限って、弾丸が飛んでくる。  それを真っ二つに斬り捨てて、怯える男に最後の一撃を加えた。  これで、客は全滅。 「ふう、邪魔者がいなくなった」  キリヤはそう呟いた。  新たな傷を負ってはいなかったが、治りかけの傷から血が出ているのを自覚しながら、無視した。  美乃華はキリヤが無傷であることにほっとしながらも、リヴォルバーを構える。 「なんだ、お客様を殺すとは!」  男が怒鳴るも、二人は動じなかった。 「貴様らからすれば、ただのカモだろうに」  キリヤは鼻で笑った。 「なんだと? まさかお前、実態を知っているとでも言うのか!」 「だったら、なんだ?」  キリヤは冷ややかな笑みを浮かべた。 「生かしておけん! なんとしても、息の根を止めるんだ!」  ――それはこっちの台詞。  キリヤと美乃華は同時に思った。  美乃華は一歩前に出て、精確に発砲する。  銃器を構えていた男達の手を次々に撃っていき、武器を使えなくしていく。  キリヤは右手に黒刀を構え、その間に距離を詰めて、一人ずつ、殺していく。  ナイフを片手に反抗してきた者もいたが、キリヤは左の二の腕でナイフを受け止めて、黒刀で殺した。  銃器を持った男達五人を殺し終えると、今さら気づいたというように、ナイフを抜いて捨てた。
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