第四章 美乃華の言い分

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第四章 美乃華の言い分

 廃工場に着いた二人は着替えを終えて、リビングにいた。  キリヤは黒のワイシャツのボタンを留めるのが面倒だったのか、羽織った状態でソファに座っている。  美乃華はキッチンにおり、なにやら準備をしている。 「珈琲、飲みます?」 「いや、飲まん」 「分かりました」  美乃華はうなずくと、近づいてきてキリヤの右隣に座った。  キリヤは美乃華の肩を抱き寄せる。  美乃華は驚いた様子だったが、されるがまま。 「どうして、嘘を吐いたんですか?」 「心配させたくなかったからだ。オーダーがくる度に、心配しているだろう?」  その声はあくまでも静かだった。 「それは、そうですよ。怪我しちゃうし、深手ですし」  美乃華は不満げに言った。 「俺からすれば、掠り傷なんだがな」 「どこがですか!?」  美乃華が身体を起こして叫んだ。 「私のことを、身体を張ってまで、守ってくれたことは、ありがとうございます。ですが、痛みを隠して強がらないでください。まあ、あのときは、敵の前でしたから、仕方がないにしても。私といるときくらいは、それを隠さないでください」 「バレていたのか……」  キリヤは呟くと顔をしかめる。 「起きていた方が楽ですか?」 「寝た方が楽だ」  キリヤは呟くように言うと、クッションを退かして、ソファに横になった。 「おいで」  優しく言うと、美乃華が身体を寄せてくる。  右手で頭を撫でてやりながら、キリヤが言った。 「腹と左手の痛みが酷い。大人しくしていれば、じきに塞がると思うが」 「無茶をするからいけないんですよ」
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