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大声を出す男に動じることもなく、冷ややかに睨みつけていると、女が慌てて荷物を纏めてリビングを出ていった。
「邪魔者はいなくなった。貴様が三鶴だな?」
「どうして名前を知っているんだ! あんたは誰だ!」
「〝黒衣〟」
キリヤはコードネームを名乗った。
「なにしにきた?」
三鶴が尋ねた。
「貴様を殺しにきた」
「俺がなにをしているのか、知っているのか?」
キリヤはその問いにうなずく。
「誰にも言わなかったのにな」
三鶴は苦笑した。
「誰にも言わなくても、周りの目は誤魔化せん」
キリヤは冷ややかに吐き捨てた。
「それもそうだな」
三鶴は溜息混じりに言った。
「今までどれくらいの女を騙してきたか、分かってんのか?」
「十人。その額二千万」
キリヤはどこか事務的に答えた。
「……そこまで、分かっているのか」
三鶴は敵わないと言いたげに、額に手を当てた。
「ああ」
キリヤは短く答えた。
「それでどうして殺されなきゃいけない?」
「自分に問いかけてみろよ」
キリヤは冷ややかに吐き捨てた。
「さあな」
「もういいか」
キリヤはそう言うと、柄に手をかけて、黒刀を抜いた。
「黙って殺されるわけにはいかない!」
三鶴はキッチンへ駆け込むと、包丁を持ち出して構えた。しかし、がたがたと震えている。
キリヤはそれを冷ややかに見つつ、右腕を斬りつける。
「ぐあっ!」
三鶴が怒りに満ちた目を、キリヤに向ける。
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