第一章 結婚詐欺師

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 大声を出す男に動じることもなく、冷ややかに睨みつけていると、女が慌てて荷物を(まと)めてリビングを出ていった。 「邪魔者はいなくなった。貴様が三鶴だな?」 「どうして名前を知っているんだ! あんたは誰だ!」 「〝(こく)()〟」  キリヤはコードネームを名乗った。 「なにしにきた?」  三鶴が尋ねた。 「貴様を殺しにきた」 「俺がなにをしているのか、知っているのか?」  キリヤはその問いにうなずく。 「誰にも言わなかったのにな」  三鶴は苦笑した。 「誰にも言わなくても、周りの目は誤魔化せん」  キリヤは冷ややかに吐き捨てた。 「それもそうだな」  三鶴は溜息混じりに言った。 「今までどれくらいの女を騙してきたか、分かってんのか?」 「十人。その額二千万」  キリヤはどこか事務的に答えた。 「……そこまで、分かっているのか」  三鶴は敵わないと言いたげに、額に手を当てた。 「ああ」  キリヤは短く答えた。 「それでどうして殺されなきゃいけない?」 「自分に問いかけてみろよ」  キリヤは冷ややかに吐き捨てた。 「さあな」 「もういいか」  キリヤはそう言うと、柄に手をかけて、黒刀を抜いた。 「黙って殺されるわけにはいかない!」  三鶴はキッチンへ駆け込むと、包丁を持ち出して構えた。しかし、がたがたと震えている。  キリヤはそれを冷ややかに見つつ、右腕を斬りつける。 「ぐあっ!」  三鶴が怒りに満ちた目を、キリヤに向ける。
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