第一章 結婚詐欺師

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 三鶴は落ち込んだ。 「仕事をやらずに帰るわけにはいかない」  キリヤは言いながら、三鶴の首に黒刀を当てる。  冷たい感触に三鶴は怯えた。 「そうだな……。全身を斬り刻んで殺してやるよ」  キリヤはぞっとするほど冷たい笑みを浮かべて言うと、当てていた黒刀を離し、右手を斬り落とした。 「がああっ!」  激しい痛みに三鶴が叫んだ。 「み、右手があ」  泣きそうになりながら、二度と使い物にならない右手を見下ろす。  キリヤは溜息を零すと、左手を斬り落とした。 「ぐうっ!」  痛い痛いと、その場でのたうち回る。  キリヤは無言で三鶴の喉を突く。 「……」  鮮血が喉から溢れ出すも、三鶴は声を出せなかった。  ただ、双眸が恐怖に染まっている。  キリヤはそれを見て見ぬふりをし、右脚を斬りつけた。続いて左脚を。  三鶴は目で、もう止めてくれと、訴えていた。目が潤んでいた。  キリヤは無情にも、腹を突き刺した。  何度も、何度も、抉り続けた。  抉る度に、三鶴の双眸から徐々に光が消えていった。  十回ほど抉り続けて、手を止めたキリヤは、三鶴を一瞥する。  焦点の合っていない目で、ぼんやりと天井を眺めていた。  腹はだらだらと鮮血が溢れ出している。  キリヤは黒刀を無造作に抜くと、心臓を一突きした。  三鶴はそれでようやく死んだ。  キリヤは思い出したように、自分の腹を見る。  傷口からどくどくと鮮血が溢れ出していた。  キリヤはふうっと溜息を吐くと、黒刀の鮮血を()ぎ落とした。  金庫に近づいて、鍵を開けて、置いてあった筆箱を挟んだ。  惨劇と化した邸宅を後にした。
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