28人が本棚に入れています
本棚に追加
【オーダー完了 生存者なし】
キリヤは短いメールを送信すると、ラボに向かって車を走らせた。
それからしばらくして、古いラボに到着したキリヤは、黒刀を両手に持って、鍵を指に引っかける。
車をそのままにラボの中へと入っていった。
ラボに入ったキリヤは、周囲に視線を走らせる。
入って右側の奥には、診察用のベッドと、そこを仕切るためのカーテンが見える。窓はない。
その反対側には、客でもくるのか、テーブルがひとつとソファが二脚置かれている。
キリヤは視線を正面に戻す。
その先には擦り切れた白衣を身に纏った一人の男が、PCの前を陣取り、なにごとかを呟いている。
「逸崎」
「おわっ! なんだ、お前か」
キリヤは少々声を張っただけなのだが、呼ばれた男――逸崎は、文字通り飛び上がった。
キリヤは溜息を吐いた。
「ったく……」
集中し過ぎて周りが見えなくなると分かっていても、逸崎はいつまで経っても過剰に驚いている。
「怪我したんだろ。さっさとこい」
逸崎は普段通りに言いながら、診察用のベッドを指さした。
キリヤは相変わらずだと思いながら、ベッドに近づく。
逸崎がカーテンを引いた。
その後、黒のローブとワイシャツを脱ぎ、革手袋も外して、近くに置いてあったカゴに放り込んだ。
蛍光灯の光に照らされてあらわになったのは、キリヤの傷痕だらけの引き締まった身体だった。左脇腹から、鮮血がどくどくと溢れ出している。
――何度見ても、酷い身体だ。独りで抱え込みすぎなんだよ。馬鹿野郎。
逸崎は内心でそう思うものの、口には出さない。
ベッドの上に寝たキリヤを一瞥し、包帯とガーゼを用意する。
ぴったりした手袋を嵌めて、ガーゼを当てて、慣れた手つきで包帯を巻きつける。
最初のコメントを投稿しよう!