序章 二人の日常

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序章 二人の日常

 ここは日本の東京の外れにある廃工場。 「珈琲(コーヒー)、入りましたよ~」  と一人の少女が、言いながらドアをノックする。  すぐに出てきた若い男は、無言でリビングのソファに座る。 「どうぞ」  少女は言いながら、熱い珈琲の入ったカップとミルクティーの入ったカップをテーブルに置く。 「ああ」  男はうなずいて、灰皿をテーブルに置く。懐からジッポライターと煙草を取り出す。煙草を口に咥えて、慣れた手つきで火を点けた。  この男の名前はキリヤ。見た目は二十八歳ほど。一八〇センチくらいで背が高い。黒髪は首の辺りで無造作に切られている。白い肌をしていて、切れ長で吊り上がった目をしており、瞳は黒。目の色はウルトラマリン(群青色)。高めの鼻梁と、薄い唇。  煙草をくゆらせるその指は、節くれだっていて、すらりと長い。  キリヤは黒のワイシャツ、スラックス、ベルト、革靴を身に着けている。  その傍らには、二本の黒刀(こくとう)が置かれている。刀身までもが黒なのだ。  そんな彼を見ている少女の名前は美乃(みの)()。  十八歳で、身長は一五〇センチほどと小柄。ごく普通の顔立ちをしており、茶髪でショートボブ。瞳は黒。目は濃い茶系。  白のフリル満点のワンピース。袖は肘の辺りまで、丈は膝上まで。赤いヒール。腰は年季の入ったリヴォルバーがホルスターに収められた状態で吊っている。  二人は〝アダル〟に所属している。キリヤは暗殺者、美乃華は殺し屋として、この場所で生活をともにしている。 「最初にここにきたときから、それなりに経ちますね」 「ああ。どうだ、ここの生活。少しは慣れたか?」  煙草を()いながら、キリヤが尋ねた。 「だいぶ慣れたように思いますよ」  美乃華は少し考えてからそう言った。 「まあ、いろいろあったからな」  その言葉を聞いた美乃華の顔が、さっと赤くなる。
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