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雪雲から大きな牡丹雪がふわりふわりと舞い降りてきたのだ。
「ゆきー!」
幼子の声に人々は思わず空を見上げる。
「雪だ!」
「ホワイトクリスマスね!」
幼子の母親は自分の首に巻いていたマドンナブルーのマフラーを解く。
そしてそれを捧げ持つようにして舞い降りてくる牡丹雪を優しく受け止めると、息子に差し出した。
「ミコトちゃん、これが本物の雪よ?」
「ほんもののゆきー」
幼子は目を三日月にして、嬉しそうな笑顔を見せた。
「あ、雪の結晶が見える! 綺麗……」
母親は感嘆の声をあげた。その姿と声に気づいた人たちも立ち止まって、雪の結晶を確認し始める。
「結晶が見える!」
「わ、ほんと! 見える!」
男は幼子に語りかける。
「ミコトちゃん。おじさんはね、雪乞人なんだよ」
「ユキゴイニンのおじさん?」
「そうだよ。雪乞人は本物の雪を降らせるんだ。ミコトちゃんは、本物の雪を見たんだよ」
「うん!」
と嬉しそうに微笑む幼子。
母親はそんな二人のやりとりを聖母のような慈愛に満ちた笑顔で見守っている。
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