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「この子、雪を見たのは初めてなんです。今日のことは一生忘れないでしょう。ありがとうございます」
「そうでしたか。雪を降らせて喜んでもらえる。こんなに嬉しいことはありません」
「素敵なお仕事ですね、雪乞人さんって」
「いやぁ、修行は厳しいし、収入は不安定だし、誰も嫁には来てくれないし、苦労の割には報われない仕事ですよ。後継者もいませんし、私が最後の雪乞人になるでしょう」
「そんな、もったいない! こんな素晴らしいお仕事なのに……」
「ぼく、ユキゴイニンになる」
「!」
雪乞人は幼子の言葉に驚いた。母親が幼子に尋ねる。
「ミコトちゃん、雪乞人になりたいの?」
「うん。ぼく、ユキゴイニンになる」
雪乞人は語りかける。
「ミコトちゃん。雪乞人になるにはね、『修行』という辛くて大変な練習を、何度もくり返さなきゃならないんだよ?」
「ぼく、シュギョウする! キレイなゆき、ふらせたい!」
「素晴らしいわ、ミコトちゃん……」
幼子とその母親の言葉に、雪乞人は感激のあまり言葉をなくしていた。
公園を銀世界に変えながら、牡丹雪は降りしきる。
了
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