突然の訪問者

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突然の訪問者

(1) 僕は自宅で家族+カンナと夕食をしていた。 どうしてカンナがいるのか? 今起きてきた僕にもわからない。 「どうしてカンナがいるの?」 母さんに訪ねてきた。 母さんが説明する。 まず、家にカンナが遊びに来た。 僕は寝てると言うと帰ろうとしたカンナを母さんが引き留めた。 起きるまで居間でお茶でもいかが?と母さんがいうとカンナは頷いた。 中々起きない僕。食事時だし一緒に夕食でもいかが?と で、現在に至る。 「それにしても神奈ちゃん随分変わったなぁ。都会に出て変わったかな?」 すでにビールを一缶開けている父さん。 「そんなことないですよ。わたしなんてまだまだ」 「いやあ、見違えるほど可愛くなったよ」 「やだ、そんな恥ずかしい」 まんざらでもない様子のカンナ。 「何しに来たんだよ?」 僕が切り出すと母さんが口を挟む。 「まあまあ、ご飯を食べてからでいいじゃない。それからゆっくり部屋でお話しなさいな。積もる話もあるでしょう」 部屋に!? 唖然とする僕を見て母さんは、不思議そうな顔をする。 「どうしたの?愛莉ちゃんが来たときは普通に部屋で二人きりになるのに」 「そうなんですか?」 母さんが余計な事を言うと、カンナがすかさず聞き返す。 「そうなのよ、毎晩二人でお勉強。愛莉ちゃんはお勉強ができるから」 それを聞いた僕はすかさず時計を見る。 まもなく19時を指し示そうとしていた。 まずい!愛莉が来る頃だ。 「そろそろ来る頃なんじゃない?」 とりあえず飯を片付ける。 ピンポーン。 呼び鈴の音だ。 来た。 「着たみたいね」 そう言って、玄関に向かう母さん。 まずい!どうやってこの場を切り抜ける? 「摩耶さん、こんばんは。お邪魔します」 「いつもいつもありがとうね愛莉ちゃん。あ、今日はちょっとお友達も来てるのよ」 どうしてそうやって余計な事を言うんだ。 「友達?」 「そうそう、小学生の頃のお友達でね」 「私今夜は帰りましょうか?」 「いいのいいの!さあ上がって」 そう言ってリビングに通されると……。 「あ!確か一緒のクラスの!」 「音無さん!?」 驚いた声を上げる愛莉。 そして僕の見る目が冷たい。 食事が喉を通らない。 「ご馳走様!さあ、2人とも部屋に行こか!」 そうやって二人を部屋に押しやる僕。 「ちょ、ちょっと待ってよ」 「なんだよ?まだ食べ終わってない!!」 2人の言うことに耳をふさぐ僕。 部屋に入ると一息ついた。 「どういうこと、説明してよ」 「で、愛莉さんだっけ?二人はどういう関係で?」 「二人とも落ち着こう。まずはカンナの件だけど……」 カンナのことは母さんから聞いた通りの事をただ伝えた。 愛莉は憮然としながらも納得したようんだ。 次はカンナに説明しないと。 「毎晩二人でお勉強してるんだって?こんな時間に?」 「実は……」 カンナに僕と愛莉は付き合ってることを白状した。 愛莉の視線がそうする以外の選択を許さなかった。 「へぇ~付き合ってるんだ。とーやモテるんだな!こんな可愛い子とねえ」 「音無さんは冬夜君とどういう関係なんですか?」 「え?ただの友達だよ?」 「ただの友達がこんな時間に二人で会うんですか?」 2人じゃない……と心の中で訂正した。 「いや、昔のノリでさ。彼女がいたなんて知らなかったしさ。ごめんごめん。誤解を生んだね」 そう言ってカンナは立ち上がる。 「じゃ!邪魔者は帰るわ。とーや、また明日な!」 そう言ってカンナは部屋を出る。 「ちょ、待てよ」 引き留めようとしたが愛莉の視線がそれを許さなかった。 「あら神奈ちゃんもう帰るの」 「ええ、用件は済んだんで」 「せっかくだから一緒に勉強したらいいのに」 「私勉強苦手だし邪魔したらわるいから」 「そう……悪いわね。また寄ってね」 「はい、それではまた」 バタン。 どうやら帰ったようだ。 なんか悪い気がしてきた。 しかし愛莉に睨まれてる今どうしようもない。 「で、どうなの?」 「へ?」 「へ?じゃないでしょ!彼女とはどうなってるのよ」 「言っただろ!ただの友達だって」 「ならいいんだけどさ。なんか彼女寂しそうな顔してたから……」 そう言って不安そうな顔をする愛莉。 そんなとこまで見てたのか。 「大丈夫だろ!さ、やろうぜ」 「う、うん……」 浮かない顔をする愛莉。 今更悩んでも遅いよな。 その日の勉強は二人とも身に入らなかった。 (2) 2,3時間ほどして勉強を終えた。 ちょっと遅くなったかな。 「送ってくるよ」 そう言って家を出る。 送ると言っても2軒隣の家なんだけど。 玄関まで送ると手を振って別れる。 いつもならそうだったのだが……。 服の袖を握って離そうとしない愛莉。 「どうした……」 「……」 何も言わない。 どうしたらいいのやら。 すると、その空気に耐え切れなくなったのか、愛莉のほうから動き出す。 僕は顔を掴まれそして……。 なんと表現していいかわからなかった。 唇に感じるのは柔らかい感触。 ほんの数秒がとても長く感じられた。 「冬夜君の事、好きだから」 そう言うと急いで家の中へと消えていった。 僕は暫く呆然ととしていた。 そして我に返ると家に帰るのであった。 わずか2軒先の帰り道。 にもかかわらず帰り道の事はよく覚えていない。 頭の中が真っ白だった。 (3) 「冬夜。ちょっとそこに座りなさい」 家に帰り部屋に戻る途中で母さんに呼び止められた。 言われた通りリビングのソファーに座る。 「神奈ちゃんのことなんだけど、両親離婚したそうなのよ」 えっ? 「で、神奈ちゃんは母親に引き取られて地元に帰ってきたんだけど。夜遅くまで働いてるそうなのよ」 そんなこと一言も…… 「こっちが地元だったとはいえ、もう3年近くいなかったでしょ?もともと友達も少なかったから寂しいのよ」 どうして言わなかったんだ? 「だから暫くの間だけでいいから、もう少し優しくしてあげてね。あ!愛莉ちゃんにも言っておかないとね」 そう言って母さんはスマホに手をやる。 「いいよ、僕が明日直接言うから」 「そう?よろしくね」 そう言うと僕は解放された。 部屋に戻るとベッドに寝そべる。 昔の彼女からは想像もつかないほどの変わりよう。 片親になってグレた。 そういう性格の奴じゃなかったはずだ。 まだ、何か隠してる気がする。 それを打ち明けてくれる日が来るのだろうか? いつの間にか残っていた愛莉の唇の感覚は忘れていた。
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