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あれから……
(1)
「ふぅ~」
僕は風呂に浸かっていた。
腹も満たされ体も癒され心地よい気分に浸っていた。
「お疲れ冬夜」
渡辺君が来た。
「どうだお前から見て新人の様子は?」
「順調なんじゃない?ちぃちゃんが良く分からないけど」
「ちぃが何か問題あるのか?」
誠が来た。
「う~ん、上手く言えないけど多分誠のせいだと思う」
「俺のせい?」
「誠を凄い補正フィルターかけて見てて、誠がちぃちゃんの理想になってるんだ」
「それで?高槻君じゃ無理っていうのか?」
「いや、誠以外の男を好きだと思った事ないんじゃないのか?ちぃちゃん」
「確かにそんな話は聞いたことないな。バレンタインくらい誰か上げる人いないのか?って昔聞いたけど『パパと兄(にい)だけ上げる~』って言ってたしな」
「誠前に話してたろ?調和の国に行った時つまらなさそうにしてたって?他に心当たりないか?」
「そういや、フラワーパーク行った時もそうだったな」
「多分そんな誠を見てきたから自分とちぃちゃんがいてもつまらないのかもと思ってるのかもしれない」
「どうすればいい?」
「明日になれば分かるんじゃないかな?」
「特訓か?」
「うん、それで何か反応示すかも」
「その件なら俺も聞きましたよ」
高槻君がやってきた。
「片桐先輩の言う通りですね、自分と居ても男はつまらないんじゃないか?って言ってました」
高槻君がそう言うと誠が頭を抱える。
「逆に、僕といてもつまらないんじゃないか?って思ったんだけどそれはどうしたらいいの?」
如月君がやってきた。
「如月君は明日どうにかするから心配しなくていいよ」
「明日何かあるんですか?」
「それは明日のお楽しみだ。なあ冬夜?」
渡辺君が言うと僕は笑っていた。
「渡辺君の言う通り、明日になってのお楽しみ」
僕がそう言うけどいまいち分かってない様子。
新人4人には明日の内容を伝えてない。
亀梨君と三沢君にも参加してもらうように手配してある。
「そう言えば亀梨君と三沢君はどうなんだ?楽しんでるか?」
渡辺君が2人を呼ぶ。2人は答えた。
上手くやれてるそうだ。それは良かった。
「今夜はこの後寝るの?」
公生が来た。
「いや、皆で騒ぐのさ」
渡辺君が言う。
「あれだけ騒いでまだ騒ぐの?」
公生が驚いている。
「楽しい酒はいつだって美味い。そういうことさ」
渡辺君が答える。
「まあ、いいや。僕はそろそろのぼせそうだから上がるね」
公生は風呂を出ていく。
「まだ子供にはわからんか」
渡辺君は笑う。
「まあ、そういうもんだよ子供ってのは」
「そうそう、俺達から見たらお前たちもまだまだ子供だ」
椎名さんと丹下さんが言う。
丹下さんは4月いっぱいで教授を辞めた。
なるべく海未ちゃんのそばにいてやりたいという理由らしい。
真鍋君が竹本君に相談しているようだ。桐谷君と石原君、西松君も混ざっている。
何があったんだろう?
「そこの5人どうしたんだ?」
渡辺君が声をかける。
「あ、渡辺先輩でいいんじゃない?真鍋君」
「そうだな、渡辺先輩ちょっと聞いてくれませんか?」
「どうしたんだ?」
真鍋君の相談はこうだ。
結婚して同棲を始めて聡美さんの小言が増えた。
異論を言おうものならすぐに喧嘩になる。
喧嘩は嫌だから自分から折れてるんだけどどうしたらいいか悩んでる。
すると桐谷君、竹本君、西松君も同じような悩みを持っていたらしい。
「早速尻に敷かれているわけだな」
渡辺君が笑っていた。
「自分の妻の小言なんてかわいいもんじゃないか?黙って聞いてやればいいさ」
渡辺君が言う。
「冬夜はどうなんだ?遠坂さんに何か言われないのか?」
誠が聞いてきた。
「僕は別に何も言われないけど、ただ何も言わずに拗ねることが多いかな?」
「そんな時どうする?」
「愛莉の話聞いてやる」
大体可愛い理由だけど。
「やっぱり黙って話聞くのが一番なのかな?」
「男は尻に敷かれてるくらいがちょうどいいって言うしな」
誠と渡辺君が言ってる。
「けど冬夜、今は同居だからいいけど。結婚したら女って変わるぞ?」
誠が言ってくる。
カンナそんなに変わったか?
「誠の場合は大体原因誠にあるんじゃないのか?」
桐谷君も多分そうだと思うけど。
「わかってねーよ、亜依なんて朝から晩まで小言だぜ!」
桐谷君が言う、そんなに大声で言うと。
「聞こえてるぞ瑛大!あとでじっくり話聞かせてもらうからな!」
亜依さんの声が聞こえてくる。
ほら言わんこっちゃない。
「どうせ誠も一緒なんだろ!あとで二人共じっくり話し合おうじゃねーか!」
カンナまで加わった。
他の皆は巻き込まれないようにそそくさと退散してる。
「ははは、俺達も早く出た方がよさそうだな」
渡辺君が言う。
「私はいいけど、冬夜君に変な事吹き込まないでね!」
愛莉もいるらいい。
渡辺君の言う通りここは早く退散した方が良さそうだ。
僕達は風呂場を出た。
(2)
「ったく男共は!こそこそと……」
亜依が怒ってる。
「文句があるなら面と向かって行ってみろってのな!」
カンナも怒ってるみたいだ。
私は気になったので聞いてみた。
「あのさ、結婚してる人に聞きたいんだけど……」
「なになに?まさか冬夜君に不満でもできた?」
「馬鹿トーヤ何かやらかしたのか!?まさか浮気とか?」
「愛莉、最初が肝心だよ!がつんといってやらないと!」
咲とカンナと亜依が言った。
「冬夜君は浮気なんてしないよ」
「じゃあどうしたの?」
「やっぱり結婚すると自分の好きな人を見る目が変わるのかな?って」
私は質問していた。
「そうね、駄目なところにばかり目が言っちゃうかもね」
聡美さんが答えた。
「だらしがないところとかそう言うのに目がいってしまうかもね」
深雪さんが言う。
「共働きなんだから少しは家事手伝えとか言いたい」
「それは分かるぜ亜依。誠の奴余計な手間ばかり増やしやがってちっとも自分でしようとしない」
「うちの瑛大にそっくりだわ神奈」
「私の場合は悠馬が無理にバイトのシフト入れて家事もこなすからそんなに働き詰めだと倒れてからじゃ遅いぞ!って言いたくなるかな」
「亜依ちゃんじゃないけどやっぱり最初の躾が肝心ねペットと同じよ」
亜依とカンナと恵美が言う。ペットって……。
「愛莉ちゃんは専業主婦になるんだっけ?」
恵美が言う。
「うん、冬夜君が『働いて家事もさせて倒れられたらパパさんに合わせる顔が無い』って……」
「て、ことは家事を手伝う気がさらさらないって事だね!」
亜依が聞く。
「冬夜君にさせるより自分がした方が早いから自分でしてるだけ……」
「それがダメなのよ愛莉!甘やかしたらとことん甘えるのが男って生き物よ」
「私も3人の意見に賛成ね。最初にどれだけ躾するかが肝心よ」
晶まで……。
「私は料理するなっていわれてるけどなあ」
未来が言う。まだ直ってなかったのね。
「まあ、皆まだ若いから分からないかもしれないけど、これから結婚考えてる子にしていい話じゃないわね」
聡美さんが言う。
「まあ、そう言われたらそうかもしれない。結婚に幻滅するかも」
亜依が言う。
「修ちゃんは私に家事させてくれないよ。全部一人でやっちゃう」
海未ちゃんが言う。
「あの質問いいですか?」
千歳さんが質問する?
「どうしたちぃちゃん?」
「皆さん好きだから結婚したんですよね?結婚したら嫌いになるんですか?それなら結婚しない方がいいんじゃないかな?って」
そうか、冬夜君が言ってた。千歳さんはまず恋愛感情を教えなきゃいけないって。
「そうじゃないのよ千歳さん」
聡美さんが言う。
「嫌いだから小言を言うんじゃないの。コミュニケーションの一つよ。皆怒ってるように見えて実はそうじゃないの。もっと自分に構ってってアピールしてるのよ」
「結婚したら構ってもらえないんですか?」
「構ってくれる旦那もいるけどね。それに嫌いなところもひっくるめて好きになるものなの。前に朝倉さんが言ってたでしょ?ダメなところもあるけどもっといいところもあるんだって。そういうのをひっくるめて恋愛っていうのよ」
「難しいんですね」
「千歳さんの彼氏さんは優しそうだしいいんじゃない?」
「確かにあれは好物件ね」
亜依が言う。
「好物件て言えば翔太の奴どうにかしないとな」
美嘉さんが話題を変えた。
「大丈夫よ美嘉ちゃん、明日思いっきり腐りきった根性叩き直してやるから」
恵美さんが言う。
「あまり乱暴な事しないでくださいね」
朝倉さんが言う。
「公生にもするんですか?」
「当然よ、若いうちに鍛えておく必要があるでしょ」
「怪我しない程度にお願いします」
奈留ちゃんが言う。
「あの……根性叩き直すって何するんですか?」
「興毅や守にもするって言ってたけど……」
森園さんと岸谷さんが聞いた。
「文字通り叩き直すのよ……」
恵美さんが笑う。
「修練……自らを鍛える鍛錬」
白鳥さんが言う。
「男共の声がしなくなったわね。先に始めてるわよ。何蔭口叩いてるか分かったもんじゃない。皆出るよ!」
亜依が言うと皆風呂を出ていく。
「遠坂さん」
聡美さんに呼び止められた。
「まだ結婚してないから分からないと思うけど、片桐君なら分かってくれる。ちゃんと遠坂さんに構ってもらえる。心配することは無いわ」
「はい」
冬夜君は優しい。
近頃は私に甘えさせてくれる。
甘えてくることもあるけど嬉しい。
でも冬夜君から不満が一つもないのが不安だった。
何か抱えてるものがあるんじゃないだろうか?
そんな心配があった。
後で聞いてみよう
(3)
「でさ、家にいる間中あれしろこれしろってうるせーんだぜ!」
桐谷君が言ってる。
「分かるぜ瑛大。うちも似たようなもんだ。俺だって部活とバイトで疲れてるってのに、ガミガミ五月蠅いんだ」
誠も言ってる。
「僕はバイト入れ過ぎるな!家計は大丈夫だから!って……少しでも貯蓄して遊びたいのに……」
竹本君が言う。
「俺も最近聡美の小言が増えて来てな。仕事も大事だけど学業をちゃんとやれって……」
それは正論だと思うんだが真鍋君。
「とにかく結婚してもろくな事無いぜ!冬夜考えなおすなら今のうちだぞ!」
桐谷君は酔いが回ってるのか後の気配に気づいていない。
「遠坂さんは大丈夫だと思うけど。神奈は最近夜の相手もしてくれないしな……」
誠も気配に気づいてないらしい。
「うちは逆ですよ。構ってって。僕だってバイトで疲れてるのに……」
竹本君も気づいてない。
「その辺にしといた方が良いんじゃないのか?」
渡辺君が言うがもう遅い。
「ほう?夜の相手して欲しいのか?今からとことん付き合ってやるぜ?」
「結婚してもろくなことが無い……?詳しく聞かせてもらおうか?」
「バイトして疲れるって自業自得でしょ!無理するなっていつも言ってるのに!」
カンナと亜依さんと咲さんが背後に立っているのに今頃気づいた3人。
けどもう遅い。
3人のお説教の時間。
渡辺君が宥めようとするが、宥める相手を間違えてしまったようだ。
美嘉さんが加わってさらに修羅場と化す。
僕はそっとフェードアウトしようとしたけどカンナが僕を掴む。
「トーヤ!お前も同罪だぞ!この3人に何吹き込まれたか知らねーけど、愛莉の苦労も考えろ!」
「そうだよ片桐君。愛莉に家事全部押し付けてるってどういうつもり!」
「冬夜君、まさか二人暮らししても同じ事するんじゃないでしょうね?」
カンナと亜依さんと咲さんの矛先が変わる。
もちろんその間に逃げ出そうとする3人を逃がさない。
「冬夜だってそこまで非道じゃないよ。な?冬夜?」
渡辺君が言う。
それが愛莉は僕が家事すると嫌がるんだ。
最近洗濯すらさせてくれなくなったし。
「困ったわね、今の冬夜君を調教するのは無理よ」
恵美さんが言う。
他の夫婦も嫁さんにこっぴどく叱れている光景が見えた。
そんな修羅場を見飽きたのか、公生と奈留は寝るといって寝室に行った。
窮地に追い込まれた僕を救ってくれたのは愛莉だった。
「ごめん、ちょっと冬夜君と二人で話したいんだ。いいかな~?」
「いいわよ、愛莉。ガツンと言ってやりな」
「トーヤきっちりしぼられて来い」
亜依さんとカンナに返事しながら愛莉は部屋の空いたスペースに座る。
「これおつまみとお酒」
愛莉は用意したおつまみと酎ハイを手に取ると僕に渡す。
「今日はお疲れ様でした」
最後にどっと疲れが出たよ。
「で、話って?」
愛莉に聞いていた。
「冬夜君は結婚についてどう考えてるの?」
「え?」
「お風呂場で何話してたのか分かんないけど気になったから」
そうだなあ、誠達の話だとあまりいい印象は無いなあ。でも……。
「まあ、あまりいい印象はなかったね」
結婚は人生の墓場……その通りの印象だった。
「うぅ……」
「愛莉たちは何を話していたの?」
「結婚すると相手の悪い所ばかりに目が言って小言言っちゃうんだって」
なるほどね。
「でもそれは、スキンシップなんだって。自分にも構って欲しいってサインだって言ってた」
「それなら問題ないね?」
「ほえ?」
「愛莉の細やかな要求くらい今でも受け入れてるつもりだよ」
愛莉のそういうこところもひっくるめて好きなんだと伝える。
不安そうだった愛莉の表情は明るくなっていた。
「あとね~。家事は全部私に押し付ける気かってみんな怒ってた」
「愛莉はそんな事無いってわかってるんだろ?」
「うん、私が風邪引いた時冬夜君ちゃんとしてくれたもんね」
「話ってそれだけ?」
「うん、皆結婚に対していい印象持ってなかったから男の人はどうなのかな?って」
確かにいい印象はなかったな。
「男性陣も似たようなもんだったよ。あまりいい印象は無かった」
「そっか~……」
愛莉は寂し気だ。
「でも愛莉の話聞いてたら印象変わった」
「ほえ?」
「愛莉に構ってやればいいんだろ?そのくらいするよ」
「わ~い」
その時渡辺君がそろそろお開きにしようかと言っている。
「それじゃそろそろ寝るか?」
「そうだね。冬夜君おやすみなさい」
「おやすみ、愛莉」
そう言うと愛莉は片づけに入っている皆にまざった。
僕も周囲のごみを片付けると寝室にもどった。
(4)
「全く男共好き勝手いいやがって。こっちの苦労も考えろって言うんだ」
「全くだわ。何もわかってないじゃない!」
「正志はそんなことねーけどな。正志の方がガミガミうるさいくらいだ」
神奈と亜依と美嘉は口々にそう言ってる。
「で、トーヤはどうだったんだ?」
神奈が聞いてきた。
「変わらないよ。『結婚しても構ってやればいいんだろう?』って」
私はその一言に救われた。冬夜君ならきっとそうしてもらえる。
「でも二人暮らしするとやっぱり変わりますよ」
「家事とか全然手伝ってくれないし。諦めてますけど」
森園さんと岸谷さんが言う。
うぅ……。
「それよ!今のうちにみっちり仕込まないと駄目だ!落ちていく一方だぞ」
「そーだ!最初が肝心だぞ!」
神奈と美嘉が言う。
「……冬夜君は家事を手伝ってくれるの。私が寝込んでる時おかゆ作ってくれたし洗濯とかもきちんとしてくれた。ネットで検索しながら一生懸命」
「それって倒れるまで一切しなかったって事じゃない!?」
「あの馬鹿め……」
恵美とカンナが言う。
「普段は私がしてるから。私が冬夜君にさせないの。冬夜君ああ見えて出来ることは何でも手伝おうってするから」
「へえ……。でも愛莉結婚したら変わるぜ。嫁の事家政婦程度にしか思ってない」
「だけど冬夜君結婚しても構ってくれるって約束してくれたもん」
私は冬夜君を必死に弁護する。
「きっと二人暮らし初めても変わらないと思う。冬夜君は冬夜君のままだと思う。そう信じてる」
「いいんじゃないそれで」
深雪さんが言った。
「誰もが結婚に淡い期待を込めている。二人の絆は確かだし片桐君なら遠坂さんの気持ちちゃんと理解してくれると思う」
「まあ、トーヤなら大丈夫か……」
「片桐君なら愛莉の気持ち汲んでくれるかもね」
深雪さんが言うと神奈と亜依が賛同する。
「お風呂でも言ったけど頭ごなしに結婚を否定するのは良くないわ。それぞれの相手にもよるんだし。皆も自分にも至らない点があると分かってるでしょ?相手の良いところ分かってるんでしょ」
深雪さんが言う。
「まあ、そうだな。夜構ってやれないのは事実だし」
神奈がいう。
「と、いうわけよ。千歳さんと朝倉さんも悲観しないで前向きに考えて。結婚というイベントは楽しいのは事実よ。じゃなきゃとっくに離婚してる」
深雪さんが千歳さんと伊織に言う。
「難しいんですね。恋愛って」
「私は結婚までは考えてないです。やっぱり身分差があるし……」
二人ともまだ恋愛に対して臆病なようだ。
岸谷さんと森園さんはどうなんだろう?
二人に聞いてみた。
「そういう話は聞いてないですね。考えてもないみたい」
「私もそういう話はまだ言ってくれない」
森園さんと岸谷さんは言った。
「あれから何か変化はあったの?」
「とりあえず変なサークルに手を出すのはやめましたね」
「渡辺班のお蔭です」
二人は言う。
「それはよかったわね」
深雪さんが言う。
二人もやっと日常を取り戻した段階。
それから先の事はゆっくり考えて行けばいい。
そうやって少しずつ変わっていくのだから。
「じゃあ、寝ましょう。明日の朝早いんでしょ?」
深雪さんが言う。
私達は静かに眠った。
(5)
「いやあ、参ったな」
「こうなるんだ冬夜。お前も結婚するなら覚悟しとけ」
誠と桐谷君がそう言う。
「まあ、悪い事ばかりでもないけどな。偶にサプライズしてやればいいだけだ。冬夜の得意分野だろそれは」
「そうだね……」
それに愛莉と確認したばかりだ。愛莉に構ってやればいい。愛莉に労いの言葉の一つでもかけてやればいい。それが潤滑油になるなら。
「片桐君も結婚を希望してるんですか?俺はまだまだだなあ。中々踏み出す勇気が無い」
「俺もです。やっぱりそれなりに重圧感じるし」
亀梨君と三沢君はまだ考えていないらしい。
まあ、学生の間はってなるよね。
「俺も考えられないな、まだ何か警戒されてるみたいで」
「僕も自信ないです。伊織を養ってく自信なんてない」
高槻君と如月君も同じようだ。
二人はまだ付き合いだして間もない。仕方ないだろう。
「4人ともまだ時間があるんだから焦らなくてもいいんじゃない?」
「それもそうですね」
亀梨君が言う。
「亀梨君達は本当にまだ結婚する気無いの?」
僕は聞いてみた。
「あの日から、考えてはいるんですけど、やっぱりつり橋効果っていうんですか。同じ死線を越えてきたから」
「ただ、俺達で二人を幸せにできるかって言われるとやっぱり不安で」
なるほどね。
その時渡辺君が言った。
「幸せは与えるものでも与えられるものでもない、二人で探していく物さ」
渡辺君の言う事は何となく理解できる。
悩んだら二人で相談すればいい。
少しずつって言い聞かせて願い事を一つずつ叶えていけばいい。
そうやって少しずつ幸せというものを作っていくんだと思う。
「まあ、ゆっくり考えていけばいいさ。時間は沢山あるんだ」
「そうですね」
渡辺君と亀梨君が言う。
「じゃあ、4人とも明日大変だろうしそろそろ寝るとしようか?」
渡辺君が言う。
「あ、そうだ。今年はフラワーパークと湯布院どっちにするの?」
「そうだな、多分湯布院じゃないのか?」
「何の話ですか?」
「何、渡辺班恒例の行事の一環だよ」
渡辺君はそう言って笑う。
この試練を乗り越えたら必ずうまくいくと渡辺君は言う。
今年は新條さん大変だろうな。
僕や石原君では意味が無い、女性じゃないと意味が無いのだから。
「じゃ、寝るぞ。おやすみ」
そう言って渡辺君が眠りにつく。
僕たちも眠りにつく。
そうして僕達の合宿一日目は終わった。
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